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【感想・解説】ナタリー・ポートマンここにあり、映画「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」

「レオン」のマチルダ役での激烈なデビューから20年以上女優としてのキャリアを積み続けてきたナタリー・ポートマン

そんな彼女が今回挑んだ役は「ケネディの妻」でした。

目次

【映画パンフレット】 ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命

 あらすじ

1963年11月22日、ダラスでのパレード中の車内で、ジョン・F・ケネディは射殺された。

暗殺とジョンソンの大統領就任でホワイトハウスは大わらわ。

そんな中、大統領夫人ジャクリーン・ケネディは、悲しみに暮れつつも自らに課された使命を心得ていた。

「夫を過去の人にはしない」

決意の元、ジャッキーは壮大な葬儀の計画を立て始める……。

時系列入り乱れる脚本

本作はやたらと時間が未来に飛んだり、戻ったりします(これを俗にフラッシュ・フォワード、フラッシュバックと呼びます)。

あらすじには書いていませんが、「ジャッキー/ファーストレディ」は夫の葬儀の後、取材に来た記者にジャッキーが回想を語るという形で進んでいきます。。

過去回想で映画が進行する作品といえば代表的なものに、モーツァルトに嫉妬した作曲家サリエリが語る物語「アマデウス」があります。

事実に基づいた物語は知識さえあれば結末が予想できるため、脚本段階で構成を工夫する必要があるのでしょう。ソーシャル・ネットワーク」も「イミテーション・ゲーム」も時系列が入り組んだ作りになっていました。

 ただこの映画において、時系列の入れ替えが効果的に働いているかといえば、なんとも言えないところ。

言い方は悪くなりますが、「ジャッキー/ファーストレディ」における時系列の入れ替えは、付け焼刃な部分が大きく脚本への貢献が小さく思えました(しかしながら、構成のせいでストーリーがわかりにくくなるといったことは起きていません。その理由は次の章で)。

いきなりネガティブな意見から入りましたが、次から褒めますよ! 

 

衣装の力を200パーセント使った作品

ジャッキーが着る衣装は、この映画ではタイムスタンプのような役割を果たします。

本作はアカデミー賞で3部門ノミネートされており、ノミネート部門のひとつに衣装デザイン賞があります。また、映画の広告でも衣装については何度も言及されており、衣装デザインが「ジャッキー/ファーストレディ」の見どころなのは間違いありません。

しかし衣装がオシャレとか、60年代ファッションを再現しているとか、それだけではないんです。

本作の衣装は複雑化した脚本を整理するのに大いに貢献しています。衣装が脚本をわかりやすくするとは、どういうことか?

カットが変わって、映画内での時間が飛び未来に行ったり過去に戻ったりする時、当然ながらジャッキーの衣装は変わります。

ある時は喪服、ある時は夫の返り血を浴びた服、そしてまたある時はポスターにも映っている真っ赤な服。

シーンごとにジャッキーが着る衣装の色調をハッキリと変わるおかげで観客は、「この服だから、今は暗殺直後の場面だな」と映画内の時間を正確に読み取ることができるのです。

映画内に登場させるプロダクトのデザインで映像に意味を込めるのは映画作りの基本ですが、本作の衣装はそれをお手本のようにやってのけました。

強い女性像、まさにナタリーが演じるべき役

ナタリーにとってのスクリーンデビュー作であり、彼女の名が世間に知れ渡るきっかけとなったのがリュック・ベッソン監督の「レオン」です。

ナタリーは若干12歳にして、家族を汚職刑事に殺され孤児となった少女マチルダを見事に演じていましたが、家族を失った(殺された)女性という点で考えれば「ジャッキー/ファーストレディ」のジャッキーはマチルダと似た立場の役柄といえます。

この二人のキャラクターは性格面でも共通点が見られ、両者ともに逆境に負けない強い精神を持った女性です。

だからこそ本作のジャクリーン・ケネディは、ナタリー・ポートマンが演じるべき役なのではないでしょうか。アップが多用され、演技力を求められる映画でしたが彼女は、夫を失いながらも使命を果たす一人の自立した人間になりきっていました。

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まとめ

私が鑑賞した回では女性のお客さんが多めでしたし、テーマも女性向けのように思えますが、「ジャッキー/ファーストレディ」は男性でも十分に楽しめます。

本作は女性の自立を描くと同時に、マスコミと政治家の関係であったり、広義の意味での芸術の重要性についての示唆も含んだ作品です。

脚本・構成はやや不満が残るところでしたが、衣装はもちろん、音楽もジャッキーの不安を表現した素晴らしい出来となっています(ちなみに作曲賞でもアカデミーノミネートされている)。

4月頭は新作ラッシュで大変ですが、ナタリー推しの方はぜひご鑑賞ください。鑑賞後、「LEON」を見返したくなる作品です。

 

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