映画評を書く人に読ませたい小説とか、最近読んだ本とかの話
みなさん、こんにちは。
今日はいつもと趣向を変えて、映画以外のコンテンツをいくつか紹介したいと思います。
『花ざかりの森・憂国』三島由紀夫
かの大作家三島由紀夫の短編集です。
三島の作品が素晴らしいのは僕が言うまでもないのですが、この中の『女方(おんながた)』という一篇が映画評を書く身として非常に惹かれました。
『女方』という短編小説は、万菊という名の歌舞伎の女方(女性役を演じる男性のこと)に憧れる脚本家が主人公の話で、小説は脚本家の視点で書かれています。
万菊という役者について語る文章が本当に美しく、読んでいると舞台で演じている万菊の姿、躍動感がありありと浮かんできます。
映画雑誌なんかで役者について書かれた文章はいくらでも目にしますが、ここまで役者自体の魅力をありありと表現した(もちろん本物の役者を僕が見たわけではないのですが)文章は初めてでした。感服です。
三島の文章の最大の特徴は、文章が想起させるイメージだけでなく、書かれている文章そのものすら美しいということです。僕もこんな名文を書いてみたいものですが、素人が真似しても読みにくい駄文にしかならないんですよね。
『論理トレーニング101題』野矢茂樹
当書は『インベスターZ』や『嫌われる勇気』、『ゼロ―――なにもない自分にちいさなイチを足していく』などの編集に携わった、有名編集者の柿内芳文さんがtwitterで紹介されていたのをきっかけに手に取ったのですが、日本語力を鍛える本として非常に実用的な名著です。
後輩に必ず読め!と渡す一冊が『論理トレーニング101題』https://t.co/VWpWpZZrCf。当たり前に使ってる日本語がいかに論理的で、実は全く使いこなせてないか叩き込まれる本。読めば日本語レベルが2段上がる、編集者レベルは4段上がると伝えても、誰一人完読した奴はいない
— 柿内芳文 (@kakkyoshifumi) 2017年2月24日
タイトルに101題とあるように、問題を解きながら読み進めていくタイプの本なのですが、解けそうで解けない問題が多く柿内さんの言葉通り”当たり前に使ってる日本語がいかに論理的で、実は全く使いこなせてないか叩き込まれる本”です。
『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』太田直子
太田直子さんは字幕翻訳家の方で、当書の他にも何冊か字幕関係の書籍を執筆されています。
字幕翻訳には厳しい制限があり、なおかつそのせいで観客や配給会社に字幕のダメ出しをされて辛い!という字幕翻訳家ならではの苦悩が赤裸々に書かれていて、映画マニアにとっては必読の一冊です。
映画のローカライズにやたらと文句をつけたくなっちゃう人に読ませたくなる本ナンバー1。
著者の太田直子さんは2016年に亡くなられてしまい、非常に残念です。
『アート・オブ・デザイン』
こちらはNetflixオリジナルコンテンツのドキュメンタリーで、デザイナーに密着取材し、そのデザイナーにとっての「アートとは何か?」を探ろうとする番組です。
情熱大陸や仕事の流儀タイプの形式をとっており、毎回一人のデザイナーに焦点を絞り制作しているのですが、デザイナーの人となりや仕事のやり方だけでなく作品そのものもしっかり見せてくれます。
まるで映像形式のポートフォリオのような、手のこんだドキュメンタリーなのでNetflixに加入されている方はぜひご覧ください。回ごとに独立した作りなので興味のあるデザイナーの回だけ見るものもちろんアリです。