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安定と愛を天秤にかけたら『きみに読む物語』

人生を変える選択と、その葛藤

※ネタバレあり

ライアン・ゴズリング特集の第4弾は『きみに読む物語』。今作は彼の名が売れるきっかけとなった映画で、認知症の妻を愛し続ける夫の愛が描かれています

ですがこの記事ではあえて認知症絡みの本筋は置いておいて、読み聞かせされる物語の内容(主人公夫婦の過去の話)に注目してみようと思います。なのであらすじもあえて、本の中の部分を書きます。

あらすじ

ノース・カロライナに住む青年ノアは、ある日避暑のためカロライナを訪れていた女性アリーと出会い恋に落ちる。しかしアリーの両親はノアとの交際に良い顔をせず、夏が終わるとアリーは両親に連れられてカロライナから去ってしまった。

失意のままお互いに相手を思い続けるノアとアリー。やがて二人は別の異性と親しくなり始める……

結婚するのは初恋の人か、金持ちか

きみに読む物語』は間違いなく純愛を描いた映画です。

しかし意外なのは、ヒロインのアリーは一度ノアと別れた後、引っ越した先でロンという男性と出会い結婚直前まで進展する点です。

「二人の結婚に反対した親が、別の男性との縁談を無理矢理すすめる」というのなら、身分違いの愛を題材にした物語でよくある話ですが、アリーはロンのことを好きになっていますし、自らの意思で結婚を決めています。

この映画は純愛の物語でありながら、ヒロインが二人の男性と恋に落ちるのが面白い所なんです。

ロンとの結婚の直前に、ノアに再会したアリーは「貧乏で学はないけれど初恋の男であるノアか、安定した職業についていて社会的地位も高いロンのどちらと結婚するか」という選択を迫られます。

結婚の持つ二つの面

「結婚するとしたら金持ちのブサイクか、それとも貧乏なイケメンかどちらがいいか」というような問いかけはネット上などでもよく耳にします。

金持ちブサイクと貧乏イケメンを天秤にかけられるのは、結婚が「生活」と「愛」という全く異なった二つの要素から構成されているからでしょう。

結婚という行為は「この人と一生愛し合います」という宣言であると同時に「この人と一生生計を共にします」という意味でもあるのです。

そのため結婚相手というのは、愛と安定した生活の両方を提供してくれる相手が望ましい。そしてそのような相手がいないとなれば、いよいよ愛と安定した生活を天秤にかけることになります。

きみに読む物語』でアリーが悩む二択は、単なる愛と安定の比較より複雑なものです。女性の方が見る時は、自分ならどちらを選択するか考えてみてほしいですね。

ロンという選択肢

上で一度述べていますが、決してロンとの結婚は強制されたものではありません。アリーは少なくともノアと再会するまは、ロンを愛していました。

「なら別にロンと結婚してもいいんじゃないの?」という考えは映画を見ている途中僕の頭の中に何度も浮かんだ考えです(無粋でごめんなさい)。

もちろん愛している度合の違いだと言われればそこまでの話なのですが、ロンという男に目立った欠点が無い事はこの映画の重要なポイントに思えます。

ロンの性格に多少なりとも欠点がある方が、アリーがノアを選ぶ結果への納得度が高まるはずです。なのにも関わらず、ロンが魅力的な選択肢として提示されているのは、何らかの演出意図があるからだと思います。

結婚相手の選択が難しければ難しいほど、アリーの葛藤に観客である僕らは共感できるようになりますし、厳しい選択の結果だからこそラストシーンのカタルシスはより上質なものになりますからね。

きみに読む物語』が陳腐なラブストーリーに終わらないのは「選択の葛藤」がスパイスとして上手く機能しているからではないでしょうか?

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 この記事で語った結婚相手の選択という問題は、あくまでも今作の要素の一部分でしかありません。興味を持たれた方はぜひチェックしてみてください。