【レビュー】「ジョン・ウィック:チャプター2」はコメディ映画である
えらいこっちゃ。
かけうどん頼んだと思ったら、カレーうどんが出てきた。
そんな映画体験を、してしまいました。
目次
概要
てなわけで「ジョン・ウィック:チャプター2」のレビューです。
主演はもちろんキアヌ・リーヴス。相変わらず人生にくたびれたオッサン感が凄まじい。監督は前作に引き続きチャド・スタエルスキ、スタント上がりの監督ってだけでも珍しいんですが、なんでもこの人「マトリックス」でキアヌ・リーヴスのスタントだったそうな。それがきっかけで「ジョン・ウィック」も撮ることになったんだそうな。
本作は続き物ではあるものの、簡単なあらすじさえ知っていればいきなり「2」から鑑賞してもほとんど問題ありません。ですので一応前作のあらすじも紹介しておきましょう。
前作あらすじ
病により最愛の妻を失った男ジョン・ウィック。街はずれの豪邸で隠者のように暮らす彼にとっての心の慰めは、妻から送られた一匹の仔犬と自慢のマスタングだけだった。
傷ついたジョンの心は仔犬との触れ合いで徐々に回復しつつあったが、ある日不幸にも出会ったロシアンマフィアに因縁をつけられたジョンはリンチに遭い、愛犬は殺され、愛車は奪われてしまう。
だが愚かなロシアンマフィアたちは知らなかった。自分たちが襲った相手の正体を。
泣く子も黙る「殺し屋殺し」ジョン・ウィックが再び銃を手に取った。
「ジョン・ウィック」とはどんな映画か
ガンフー!
キアヌ・リーヴス再ブレイクのきっかけともなった「ジョン・ウィック」が画期的だったのは、ズバリ「ガンフー」(ガン+カンフー)とも呼ばれる近接銃撃アクションでした。
John Wick Club Scene (full scene)
映画でガンアクションを撮る際、「銃を撃つ側と撃たれる側をフレーム内に同時に収めるのが難しい」という問題が発生します。
もちろんカメラを引けば両者をフレーム内に収められますが、そうすれば画面内の人物は小さくなってしまいアクションの迫力が台無しになってしまいます。そこで考えられたのが「撃つ側と撃たれる側の物理的な距離を縮める」ことでした。上の動画を見ればわかる通り、「ジョン・ウィック」では素手で殴り合うような間合いで銃撃戦を行っています。
撃つ側撃たれる側を同一フレームに収められるようになったおかげで、やたらとカットを割る必要性も無くなり、「ジョン・ウィック」はガンアクションにしては長回し気味のカットが多い映画となりました。「燃えよドラゴン」など昔のカンフー映画は引き目で撮ってカットをあまり割らないのが特徴で、それが「ガンフー」の語源になったのでしょう。
リアリティなんてクソ食らえ!
「ジョン・ウィック」は一見すると「ボーン~」シリーズや「96時間」シリーズのようなリアリティを追求したタイプのアクション映画に思えます。しかしその実、ほんの数分でも本編をご覧になればわかる通り「ジョン・ウィック」はシュワちゃん、スタローンもびっくりのケレン味タップリ映画です。
「ジョン・ウィック:チャプター2」
さて前置きが長くなりましたが、肝心の「チャプター2」の話に移りましょう。
「ジョン・ウィック:チャプター2」あらすじ
ロシアンマフィアへの復讐を完遂したジョンは再び孤独な隠遁生活に戻ろうとしていたが、運命は彼に引退を許さなかった。
過去に止む無く交わした誓約のためジョンはイタリア・ローマまで飛び、暗殺の任に就くが、事はそう単純ではなかった。
賞金を懸けられ世界中の殺し屋から命を狙われることになったジョン。彼に平穏が訪れる日は来るのか……。
ガンフーの迫力、爽快感は前作譲り
うーんやっぱりアクションはカッコよかった。
アクションについては以上です(良くも悪くも前作と代わり映えしない印象でした)。
「コンチネンタルホテル」スパイ映画的な設定
ジョン・ウィックで目を引くのはアクションだけではありません。本作にはアクションに引けを取らずブッ飛んだおかしな設定があります。それが「コンチネンタルホテル」です。前作ではその存在を仄めかす程度でしか出てこなかった「コンチネンタルホテル」ですが、続編である本作ではストーリー内で非常に重要な役割を担っています。
コンチネンタルホテルは世界中の殺し屋が所属する「殺し屋協会」のような組織で、殺し屋に一時の安らぎを与えると同時に、武器の調達など彼らの仕事をサポートするサービスを提供しています。
ホテルはいくつかの掟を定めており、この掟を破った殺し屋は最低でも協会からの追放処分、場合によっては容赦なく消されます。ちなみに劇中で明言されている掟は「ホテル内での仕事(つまり殺し)は禁止」だけです。
またホテルの各種サービスを受けるにはホテルが独自に流通させている金貨を払わねばなりません。面白いのが殺し屋が金貨を支払う時に「武器を買いたい」とか「死体を掃除してくれ」とかストレートな物言いをせず、「ソムリエを呼んでくれ」だとか「ディナーにしてくれ」など隠語を用いることです。殺し屋も世間体を気にするんですね。
「キングスマン」で、高級テーラーKingsmanが実はスパイ組織だった、という設定がありましたがコンチネンタルホテルもまさにそれですよ。
潜入暗殺を依頼されたり、悪役に一癖ある用心棒がいたり、「ジョン・ウィック:チャプター2」はスパイ映画の範疇に入れてもいいくらいスパイ映画してます。
アクション映画かと思ったらアクションコメディだった
ジョンを襲ったロシアンマフィアは彼をただのオッサンだと見くびった結果、実は最強の殺し屋だった彼によって無残な死を遂げました。
そして今日「ジョン・ウィック:チャプター2」を単なる良質なアクション映画だと見くびって劇場へ向かった僕は、実は最強のコメディでもあった「チャプター2」にやられてしまいました。
この映画、とにかく最初から最後まで笑いどころたっぷりです。
冒頭からして「車を取り戻しにきたジョンがマフィアのアジトで大虐殺、車を取り返して家に帰った時には既にマスタングは廃車寸前」って展開にひと笑い。いやお前大切な車取り返しに来たんじゃなかったのかと、ボロボロやんけと。
劇中で最も爆笑必死なのは、ひょんな理由から700万ドルの賞金を懸けられたウィックが世界中の殺し屋から狙われるシークエンスでしょう。そもそも「世界中の殺し屋から狙われる」というシチュエーション自体が笑えます。その上彼を狙う殺し屋たちが、仕込みバイオリン女、北斗の拳のハート様みたいな中国人とやたらとユニークなのもgood。
そして極めつけはウィックと互角に戦えるほどの実力派の殺し屋カシアンとウィックのタイマン。もみ合いながら転がり回り、そのままショーウィンドウに突っ込んでさあ屋内アクションか……と思いきや入った先はコンチネンタルホテル。二人は支配人から「ホテル内での殺しは厳禁」と注意を食らいます。ウィックとカシアンは喧嘩をたしなめられた小学生のようにしゅんとして、血まみれのままホテルのバーで飲み始めます。微妙な雰囲気のまま飲みつつ「次会ったら確実に殺してやるぜ」とかなんとか言い合ってその場は解散。殺し屋ってそれいいんでしょうか。
そんな緩~いやり取りの後、再会した二人は案の定戦闘に入ります。人通りの多い駅の中で出くわした彼らは、周囲の一般人にバレぬようコソコソとした銃撃戦を始めます。「コソコソとした銃撃戦って何だよ」とお思いの方、本当にコソコソとした銃撃戦があるので見に行ってみてください。ちなみに僕の見た回ではこのシーンが一番ウケてました。
キャラがロシア語を喋った時に出てくるやたらとチープな字幕など、前作の時点でシュールな要素はありましたが、本作ではそれが100倍増しされています。
まとめ
この映画にツッコミはいません。登場人物全員ボケです。キアヌ・リーヴスもローレンス・フィッシュバーンも、全員大真面目な顔してボケます。だからシュールで笑えるんです。鑑賞中隣にいた人たちも僕と同じくこの映画のブッ飛びっぷりに爆笑していて、なんだか不思議な一体感を感じる映画体験でした。
そんなわけで「ジョン・ウィック:チャプター2」ゲラゲラ笑いたい人も、ガンフーが見たい人もぜひ劇場へどうぞ。
ジョン・ウィック2鑑賞。前作のスピーディなアクションはそのままにスパイ映画要素とコメディ要素がてんこ盛りに、つまり、サイコー!!
— もゆる@映画ブログ (@moyuru2580) 2017年7月9日