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いまさら見たぞこの映画「L.A.コンフィデンシャル」

タイトル通り、本当に今更なのですが「L.A.コンフィデンシャル」を見ました。

まあ今見ると、ラッセル・クロウの痩せっぷりが一番のみどころですよ。本当に。

「ナイスガイズ!」鑑賞後にこちらを見たらもう涙が止まりません、時の流れとはここまで残酷なのかと。

ちなみにケビン・スペイシーは今も昔もほとんど変わらぬ姿をキープしています。見た目は冴えないオッサン、中身は狡猾という役者としてのキャラもブレませんね。

さて役者の話ばかりしてもしょうがないので本題に行きましょう。

もくじ

あらすじ

1950年代ロサンゼルス、ギャングの親玉ミッキー・コーエンが逮捕され、彼の後釜を狙おうとするギャングたちの活動に、ロサンゼルス警察は頭を悩ませていた。

そんな折、カフェで6人の被害を出す強盗殺人事件が発生。元警察官も殺害されていたため、捜査はスピーディに進み、犯人グループが射殺をもって事件は解決されたかのように思われた。

しかし事件には大きな陰謀が潜んでおり……。

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個性的な3人の刑事

アクション少なめ、脚本は難解、美人もそこまで出てこないこの映画の何が観客を惹きつけるかと言えば、やはり主要登場人物である3人の警官でしょう。

女に暴力を振るう奴だけは許さない腕っぷし刑事バド(ラッセル・クロウ

同僚から「出世の亡者」「裏切者」と罵られても不正を許さない真面目な刑事エクスリー(ガイ・ピアース

富と名声のためなら賄賂も裏取引も厭わない刑事ヴィンセンス(ケビン・スペイシー

3人はそれぞれ異なったアプローチで事件に向かいます。

性格も違いすぎておよそウマが合わず、序盤はほとんど別行動です。そのためこの映画は前半は特に群像劇のような様相を見せます。

3人の中で最も作中で成長をみせるのが「メメント」のガイ・ピアース演じるエクスリー。序盤は単なる真面目な眼鏡クンなのですが、映画が進むにつれ彼は急速に刑事としての頭角を現していきます。

取り調べでは不暴力に徹するという信条を持つ彼は、「お前の友達はお前をホモって言ってたぞ! そんな奴裏切って吐いちまえ!」なんて言って言葉巧みに自白を促します(言葉の暴力もコンプラ的にどうなんだよというツッコミは禁物です、だって50年代なんですもの)。

さらに映画後半では嫌っていた暴力の力まで存分に利用し、事件を解決に導き始めるという逞しい成長ぶり。

清廉潔白を貫いていた純粋な青年が、事件を通して徐々にルールを破ることの必要性を理解し、警察官としても一人の人間としても成長する今作は、ある種のビルドゥングスロマンなのです。

※ここから先はネタバレがあります

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L.A.コンフィデンシャル」が描こうとしたもの

今作は「不正が正義になり得る」というどこか倒錯したメッセージを持っています。

映画序盤のエクスリーは、たとえ犯人逮捕のためでも一切の不正を許しませんでした。しかし、脅しで自白を取るバドや金で情報を得るヴィンセンスとの関わり、そして「殺さなければ殺される」という極限状態との直面によって、彼のやり方は変容していきます。

クライマックスで黒幕を撃ち殺すか、逮捕するかという葛藤の末エクスリーは射殺を選択します。一見「ダーティー・ハリー」の焼き直しにも思えるこのラストは、元は清廉潔白で”ダーティ”ではなかったエクスリーが行うことで新たな意味を生み出します。

そして犯人殺害の後のエクスリーへの取り調べで、彼は自らの不利益になる真実まで包み隠さず話します。

これによって彼の行いはギャングや黒幕がやっていた「不正のための不正」ではなく、「正義のための不正」であると証明されるのです。

大きくくくれば「L.A.コンフィデンシャル」のテーマは「正義とは何か」と言えますし、もう少し詳細にするならば「法律を破らなければ達成できない正義もあるのではないか?」となるのではないでしょうか。

まとめ

惜しくも去年亡くなってしまったカーティス・ハンソン監督の代表作、「L.A.コンフィデンシャル」。

本文ではアクションが少ないと書きましたが、少ないながらもガンアクションの質は高めとなっています。

Netflixで鑑賞可能ですので、ぜひご覧ください。そして銃を持った役者のキレのある動きにシビれてください。ラッセル・クロウの痩せっぷりにおったまげてください。