Walking Pictures

映画、書籍、ゲーム、その他もろもろサブカルチャーについて…

【感想・解説】ウディ・アレン初心者のための「カフェ・ソサエティ」

ウディ・アレンという映画監督を、皆さんはご存じでしょうか。

40年以上もの間毎年のように映画を撮っているウディは、もちろん映画監督の中では有名な部類です。しかし、彼の映画は小規模なものが多く派手な広告も打たないため、ウディ・アレンについては名前くらいしか知らない方も少なくないのではないでしょうか。

5/5より日本での公開が始まった「カフェ・ソサエティ」は実にウディらしい作品です。そこで、この記事では「カフェ・ソサエティ」を参考にウディ・アレンの“ウディらしさ”について解説したいと思います。

目次

続きを読む

実写版「美女と野獣」にイマイチ共感できない理由を考察してみた

つい先日アニメ版、実写版と立て続けに「美女と野獣」を鑑賞した私ですが、そんな私の心には本作への何か言語化しきれないもやっとした感情が渦巻いていました。

そして最近もやっとした感情の正体がある程度見えてきたので、今日は私が「美女と野獣」を観て感じたモヤモヤの正体について書こうと思います。

目次

美女と野獣」の教訓

見た目で人を判断する王子が醜い老婆を差別したため魔女に恐ろしい野獣に変えられてしまうところから「美女と野獣」の物語は幕を開けます。

この寓話が私たちに「人を見た目で判断してはいけない」という教訓を語りかけているのは明かです。

現代社会は見た目至上主義

私たちの生きる社会はとにもかくにも見た目が大事。「※ただしイケメンに限る」という言葉がちょっとしたブームになったこともあったように、顔のいい人はさまざまな面で得をするのが現代社会の常です。

もちろん内面だって人間を構成する重要な要素なのですが、第一印象はほとんど見た目だけで決まります。

そして厄介なのは見た目は持って生まれるもので、そう簡単に変えられないことです。

だからこそお世辞にも顔が良いとは言えない、まさに今パソコンに向かってキーボードを叩いている私のような人たちは、世間一般でいうイケメン・美女に羨望し同時に強く嫉妬するのでしょう。

美女と野獣」はブサイク非モテを救えるのか?

「人は見た目じゃない」と語る「美女と野獣」は、はたしてイケメン・美女の日陰で燻る非モテたちの心を少しでも救済できたのか?

残念ながらこの問いの答えについて、私にはNOというほかありません。

なぜなら、「野獣の醜さ」と「非モテのルックスの悪さ」は本質的に異なるものだからです。

絶対的な醜さと相対的な醜さ

美女と野獣」の野獣はその姿を見られるだけで、怖がられ悲鳴をあげられる存在です。まあ毛むくじゃらで角が生えてて顔も獣そのものなんですから当たり前ですね。野獣がモテない原因は根本的に野獣の見た目があまりにも恐ろしいからです。

ルックスを100点満点で表現するならそもそも人間でない野獣は0点どころかマイナス10000点ぐらいの存在なんです。

しかし、非モテの悩みというのは別に街角で歩いていたら女性に悲鳴をあげられた、とかそんなことではありません。

非モテの悩みとは、自分より顔の良い奴には妻なり彼女なりがいるのに自分は独り身である、というのに尽きます。非モテと言っても同じ人間なんですから、ルックスの差は0点から100点の間の幅に過ぎないわけです。

つまり、野獣の醜さは絶対的なものであるのに対して、現代社会の非モテの醜さは相対的なものなのです。

言い換えれば野獣の持つ悩みが自己嫌悪なら、現代非モテの悩みは嫉妬だということです。

美女と野獣」に共感しにくい理由

本作は絶対的な醜さが救済される物語に過ぎず、相対的醜さに苦しめられている現代人の心を揺さぶるには力不足だったと言わざるをえません、

美女と野獣」の中で相対的醜さに関連するキャラクターはル・フウぐらいなものです。モテモテのガストンの傍にいつもいるル・フウはデブでチビで顔も良くありません。

ル・フウがガストンに向ける羨望と嫉妬の入り混じった眼差し、それこそが本当に現代人に共感されうるものではないでしょうか。

ル・フウがゲイとして描かれたのはそれはそれで素晴らしいのですが、相対的な醜さについて描くとしたらル・フウを異性愛者のままにしておいても良かったのかもしれません。

空から女の子型のご都合主義なストーリー

元がディズニーアニメなのであまり重箱の隅をつつくような真似はしたくないのが本心ではありますが、本作が感情移入しにくいもう一つの理由として書いておきたいのが美女と野獣」のご都合主義についての話。

結局野獣はベルがたまたま城を訪れたおかげで呪いが解けたわけで、もしベルが城を訪れていなければ間違いなく野獣たちの呪いは解けないままだったはずです。

その点において、「美女と野獣」はラブコメ漫画・アニメの「いきなり『~だっちゃ』喋りの女の子が現れた」とか「引きこもりの家に日本引きこもり協会から美少女が来た」というご都合主義な始まり方と何ら変わりありません。

ご都合主義ラブコメを揶揄するつもりはありませんが、あまりにも都合の良い展開は受け手の共感を著しく妨げます。

しかし、実写化してもファンタジーであり続けさせるのがディズニー実写化シリーズのやり方なんでしょうから、これ以上文句をつけるのはやめておきます。

 

美女と野獣」に納得できなかった人に勧めたい映画

さて、甘ったるくて都合のいいファンタジーじゃ俺のリビドーと嫉妬は収まらないぜ、というそんなあなたにとっておきの作品をご紹介しましょう。

ヘルタースケルター

それは「ヘルタースケルター」です。監督:蜷川実花 主演:沢尻エリカ

度重なる美容整形でブサイクから一転カリスマモデルまでのし上がった主人公りりこは、美女であると同時に野獣でもあります。

見た目至上主義の社会に翻弄されながら生きる儚い一人の「美女と野獣」の物語は、見た目で苦悩する現代人なら共感できること間違いなしです。

あとがき

なんだか実写版「美女と野獣」をボロカスにこき下ろすような記事になってしまいましたが、「美女と野獣」は映画としての出来は非常にいい素晴らしい映画ですよ! GWは「美女と野獣」で決まりですよ!

だからディズニーの広報関係者の皆さんはこの記事を読んでも何の法的措置も取らないでくださいね!

こちらの記事も要チェック↓

疲れた新入社員に送りたい、仕事にまつわる3つの映画

新年度が始まってもう一ヵ月が経とうとしています。

新生活を始めた人も、いままで通りのルーチンで暮らしている人も、GWを目前にしてそろそろ疲れが溜まってきた頃ではないでしょうか。

上司は堅物

残業は当たり前

プレミアムフライデーは休めない

おまけに給料は安い

仕事に対するヘイトも溜まりに溜まっていることでしょう。

そこで、この記事では少ない休みを映画鑑賞に使う素晴らしい趣味の方に向けて!仕事の悩み・疲れをぶっ飛ばす3本の「仕事にまつわる映画」を紹介します!

目次

  • AIに仕事を奪われそうなあなたに
  • 働き詰めでもう限界!というあなたへ
  • 働きすぎて生きてるのか死んでるのかわからないあなたへ
  • あとがき
続きを読む

【感想・レビュー】カンフーによるカンフーのためのカンフー映画「イップ・マン 継承」

カンフー映画と聞いて読者の皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?

悪漢に虐げられる善良な民、颯爽と現れるカンフーの達人、ちぎっては投げられる悪漢たち、悪い奴らは逃げ帰り町に平和がもたらされめでたしめでたし。

さすがにそんなステレオタイプのカンフーを想像される方は少ないかと思います。

ですが「イップ・マン 継承」はそんなベッタベタのカンフーを純度100パーセントで見せる名作なんです!

この記事ではドニー・イェン主演の「イップ・マン」シリーズ三作目、「イップ・マン 継承」の魅力をご紹介します。

目次

  •  あらすじ
  • 純粋にカンフーを見せるために作られた脚本
  • 過去最高のアクション密度、カンフー&カンフーな2時間
  • 映画とカンフーの相性の良さ
  • あとがき
続きを読む

【感想・レビュー】甘くて、儚い非モテ少女の恋「スウィート17モンスター」

「青春」なんて言葉はどこかいい響きに聞こえるかもしれませんが、ずっと異性とイチャついてばかりで毎日が楽しくて仕方ない、なんて青春を送った人は意外と少ないんじゃないでしょうか。

むしろ大多数のティーンエイジャーはつまらない毎日にうんざりしてて、若い熱情を持て余して悶々としていたはずです。

今日紹介する映画はそんなモテない高校生の青春を現実味たっぷりに描いた良作、「スウィート17モンスター」。あの小島監督もオススメされていた作品です。

目次

  •  あらすじ
  • 主人公のルックスが完璧
  • リアルすぎる恋の葛藤
  • アメリカ社会と車
  • あとがき
続きを読む

~ディズニー映画に同性愛が生まれた瞬間~実写版「美女と野獣」評【感想】

今年3月、実写版「美女と野獣」で悪役ガストンの子分ル・フウが同性愛者として脚色されていたことが話題を呼び起こした。

このことから一部の国では上映禁止の声すらあがった「美女と野獣」。

監督ビル・コンドンはなぜ、原作にはない同性愛の描写を入れたのか? それはどのような効果を発揮しているのか?

ディズニー映画の多様性に焦点を絞り考察してみよう。

目次

美女と野獣 オリジナル・サウンドトラック デラックス・エディション(日本語版)

あらすじ

ある日失踪した父を探すため、村を出た少女ベル。捜索の末彼女は森の中にある寂れた城へと辿り着いた。ベルが城に足を踏み入れると、動く家具・喋る食器、そして醜い野獣が彼女の前に姿を現した。

野獣には呪いがかけられていた。魔法のバラが枯れる前に野獣が誰かと愛し合わなければ、彼の呪いは永遠に解けることは無くなる。

ベルの父は野獣によってこの城に捕えられていた。ベルは父の身代わりとなり城に幽閉され、2人の同居生活が幕を開けた。

変わり者の美女とわがままな野獣の間に愛は芽生えるのか……

アニメ版と実写版の相違点

実は「美女と野獣」というタイトルの映画はかなりの数存在するが、ご存じの通り今回の実写版は1991年にディズニーが制作したアニメ版の実写化作品だ。

実写化にあたって脚色が加えられたのはディティールのみで、ストーリーの大筋はアニメ版も実写版も大差はない。

しかしながら、アニメ版を踏まえて本作を観ると、アニメでは違和感の感じられた(ストーリーの整合性に納得いかない)場面に適切な脚色が加えられているのがわかる。

原作の味はそのままに、フォーマットの変化によって歪んでしまう部分はしっかり手直しする。まさに本作は実写化映画のお手本ではないか。

これから映画館に足を運ぶ予定の方には、事前にアニメを観ておくのをオススメする。脚本の手際の良さに度肝を抜かれること間違いなしだ。

多人種・多文化への配慮

実写版「美女と野獣」がマイノリティへの配慮がある作品であることは既に述べたが、この映画がフォローするのは同性愛者だけではない。

その証拠は本来アニメ版にはほぼ登場していなかった黒人が、かなり積極的にキャスティングされていることだ。

美女と野獣」の舞台はおそらく18世紀ごろのフランスだが、この時代の貴族の召使に黒色人種が何人もいたとは考えにくい。

つまりビル・コンドン監督は実写化にあたり、ストーリーでは整合性を重視した脚色をしながらも、同時にキャストの白色化を避けるためにリアリティをある程度犠牲にしているのだ。

ディズニー映画始めての同性愛者 ル・フウ

そもそもル・フウって誰?

ジョシュ・ギャッド演じるル・フウは、主人公ベルに強引な結婚を迫るガストンの弟分的な立ち位置のキャラクターだ。

腕っぷしが強く男前のガストンとは対照的にチビでデブのル・フウだが、頭の空っぽなガストンにとってル・フウは頼れる参謀であり一番の友人である。

美女と野獣」でベルは野獣につくすが、ル・フウはそれ以上に献身的にガストンにつくしている。それこそ、「なぜル・フウはずっとガストンの言いなりなのか?」という疑問さえ湧いてくる振る舞いだが、その答えのひとつがガストンへの想いなのかもしれない。

同性愛描写は映画のどの部分なのか?

監督ビル・コンドンはインタビューで、ル・フウが同性愛者である可能性を示唆したが(イギリスの同性愛者向け雑誌「Attitude」4月号)、映画本編でル・フウが同性愛者だと直接示されるシーンはごく短い。

呪いが解けた後のダンスパーティーで、他のキャラクターは異性と踊る中、ル・フウが男性と踊ってるシーンが一瞬だけ映し出される。

直接的な描写はここだけで、あとはジョシュの細かい演技やセリフの端々から「もしかしたらル・フウはガストンが好きなのかもしれない」とほのめかす程度となっている。

彼についての描写を増やしすぎても映画のテーマがブレてしまい、かといって同性愛の示唆をこれより切り詰めれば演出意図が伝わらなくなるという絶妙なバランスと言うしかない。

ほんの少しの脚色でドラマがより鮮やかになる

ル・フウが同性愛者として描写されることは、単に政治的な意味合いだけをもつのではない。彼がガストンに恋しているのだとしたら、「美女と野獣」の物語はアニメ版とは違う解釈が可能になるのだ。

ル・フウの憧れの人であり最良の友人ガストン、ガストンは村一番の美人ベルに惹かれてあの手この手で彼女にアプローチを続けている。友人だからこそガストンの求婚を手助けしてやりたいル・フウだが、ガストンは彼にとって友達以上の存在だった。

ベルとの結婚が上手くいって欲しいのやら、欲しくないのやら、葛藤が解消されぬまま野獣討伐は始まり、ル・フウはガストンを亡くしてしまう。しかし結果的にガストンから解き放たれたル・フウは、新たな人生の一歩を踏み出すのだった。

ル・フウの視点から再解釈することで実写版「美女と野獣」は、恋人を失った男の悲劇としても読むことができるようになる。しかし悲劇は単なる悲劇で終わらず、最後にはル・フウが別の男性との愛を育む希望をも示す。

それがわずか数秒のル・フウのダンスシーンなのだ。

美女と野獣」がディズニー初の同性愛を描いた作品になる意味

「白雪姫」、「シンデレラ」、「眠れる森の美女」と初期のディズニー映画のヒロインたちは皆受け身で、どこか女性への偏見が垣間見えていた。

そしてアニメの中のステレオタイプな女性のイメージを打ち破ったのが、他ならぬ「美女と野獣」のベルだった。

本ばかり読んでいる空想好きなベルは村では「funny girl(おかしな子)」と呼ばれるが、彼女は我が道を行き最後には心優しい野獣と結ばれる。

古い女性像からの脱却を目指した「美女と野獣」が実写化されるにあたり、同性愛というテーマを少なからず含んでいることには特別な意味合いを感じずにはいられない。

 

あとがき 

ディズニー映画は名作の宝庫だが、何十年も前の作品群にはステレオタイプな描写があることは否定できない。名作に積もった偏見という埃を払う意味でも、今後のディズニー実写映画には期待したい。今回のような素晴らしい脚色が施された作品を見るときが待ち遠しい。

美女と野獣」、ミュージカル映画としても実写化映画としてもハイクオリティな今作を見逃す手はないだろう。

 

こちらの記事も要チェック↓

4/20は何の日だ?~麻薬映画の誘い~

今日4月20日が何の日かご存じだろうか。

おそらく読者の方の半分もわからないであろうこの質問の答えは、マリファナの日(マリファナデー)」だ。

マリファナの通称「420」にちなんだ4月20日には、アメリカ・カナダの各地で人々がマリファナの合法化を訴えながら"ハッパ"をふかす。

でも日本人の僕たちにとってマリファナはどこか遠くの存在だ。

だからこそ、少しでもドラッギーで浮かれた気分になるために今日は麻薬が登場する映画を紹介しよう。

※以下麻薬についての説明もありますが、筆者は薬学分野で一切の資格を持たない素人であるということをお忘れなく。

目次

  •  さまざまな麻薬とそれにまつわる映画たち
    • 全ての麻薬の入口~マリファナ~
    • 例の白い粉~ コカイン~
    • 日本生まれの薬物~覚せい剤~
    •  麻薬の王様~ヘロイン~
  • まとめ~麻薬について知ると映画はもっと面白くなる~
続きを読む