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【感想】モノマネ映画評『アウトレイジ 最終章』

(※この文章は当ブログ管理人もゆるが勝手にビートたけしの文体を真似して書いたものであり、ビートたけし及び北野武とは何ら関係ありません)

まったく、自分の本の中で“そもそもの話、シリーズ第三作なんてものにいいものがあるわけないんだけど、(以下省略)”なんて言ってたクセにたけしの奴ちゃっかり豪華キャストの三部作なんか作りやがって。チクショー。

 

ターミネーター3』然り、『エイリアン3』然り、『ダークナイト ライジング』然り、三作目は駄作になるもんだ。それがわかってても撮っちゃうんだから、つくづくたけしも現金なヤツだぜ。

 

なんにせよ、見ちゃったものは見ちゃったもの。本題の『アウトレイジ 最終章』の話をするしかないな。

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目次だ、コノヤロー

 よく言えば北野映画の集大成、悪く言えば今までの寄せ集め

アウトレイジ 最終章』、ワンカット目に映し出されるのは真っ青な済州島の海。画としては申し分ない。『ソナチネ』や『あの夏、いちばん静かな海。』を彷彿とさせる、これぞまさにキタノブルーだ。

 

とでも言うと思ったかバカヤロー。いくらウケてるからって、バカの一つ覚えじゃないんだからこんなあからさまな使い方があるかっての。

 

だいたいこの映画、過去の自作から拝借してきた部品が多すぎる。

 

マシンガン乱射は『ソナチネ』、仕込み銃のアイデアは『3-4x10月』、立体駐車場の屋上使うシーンなんかは『HANA-BI』、他にも探せばキリがない。

 

もちろん見ているうちに過去作を走馬灯のように思い出せるのはエンタメとしては悪くはないかもしれないが、オイラは年食っても攻めの姿勢を崩さない北野武が見たかったぜ。

アナログ

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やはり北野武は役者の味を生かす天才料理人だぜ

監督北野武の一番の得意技は何か、と言えばやはり真っ先に思いつくのが役者の使い方の上手さだ。

 

アウトレイジ』シリーズは毎回登場人物の真に迫った演技が見ものだけど、今回は中でも日韓を股にかけるフィクサー張会長の大物オーラ漂う演技がたまらなかったね。

 

誰が演じてるのか気になって調べてみたら、なんでも張会長を演じてる役者は監督の知り合いの実業家で演技のプロでもなんでもないんだと。これは演技指導の勝利って言うよりは元々実業家やってるヤツに実業家の役やらせた北野の作戦勝ちだな。

 

『その男』や『ソナチネ』の頃からの話だけど、北野武はとにかく役者に芝居をさせたがらない。無駄な演技をそぎ落として殆んど役者そのものにまで近づいた登場人物を撮ろとする。

 

エンタメ路線に走った『アウトレイジ』シリーズはちょっとばかしヤクザの芝居がクサいんだけど、沈黙で全てを語る過去の北野映画へのカウンターとして考えれば怒号飛び交う『アウトレイジ』シリーズも悪くないと思うぜ。

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ド派手なバイオレンスはハリウッドで十分

今回は『アウトレイジ』や『アウトレイジ ビヨンド』に比べて、派手な暴力シーンや殺陣が少なかったと文句を言ってるヤツもいるみたいだが、今作ぐらい落ち着いた作風のほうが邦画に合ってると思うね。

 

邦画の予算じゃ所詮いくら派手にしたってたかが知れてる。なんせ海の向こうじゃこっちの何十倍もの予算で映画撮ってるんだから。

 

それよりも、むしろ邦画が目指すべきは洋画には出来ないこと、字幕や吹き替えでは読み取れない微妙な感情の機微を描くことじゃねえのか。

 

その点では『アウトレイジ 最終章』はバッチリ成功していたぜ。大杉漣のどこかヤクザになりきれていないヤクザの演技や、張会長の静かな迫力は外国人にはなかなか伝わらないだろうね。

 総評 決して悪い作品じゃないが、もっと大胆にハジけて欲しいね

悪口紛いのことも色々言っちまったけど『アウトレイジ 最終章』、見て損はない傑作だぜ。エンタメ映画としての出来は申し分なしだ。

 

ただ、今後も自己模倣的な映画ばかり撮るようじゃ「世界のキタノも老いた」と言われる日は近いんじゃないかな。

 

だいたい最近のたけし、ほとんど説教ジジイじゃねぇか。『アナログ』なんて一行目から「アジェンダ」や「エビデンス」みたいな横文字並べる上司への文句から始まるが、いまさら「横文字用語が意味不明」ネタは古すぎるだろう。

 

おっと、悪口の筆が乗ってくる前に、「カット、カット」。

 

仁義なき映画論 (文春文庫)

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