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「映画をもっと面白く」をスローガンに古今東西の映画について語ります

【北野武】全作品解説「ソナチネ」【感想と考察】

どうも、もゆるです。最近またフラれました。

さて、それはともかく今日紹介するのは北野武監督4作目にして、最高傑作と名高い「ソナチネ」。

ソナチネ [DVD]

目次

 概要

北野武最高傑作のはずが……

北野映画が大好きないわゆるキタニストと言われる皆さんに「たけしの映画でどれが好きですか?」と聞くと、まあ大抵の場合答えは「ソナチネ」と返ってきます(当社比)。

僕はどちらかと言えば「3-4x10月」の方が好みではありますが、確かに「ソナチネ」は最高傑作と言われても文句のないクオリティの作品です。

批評家からの評価も公開当時から高く、じゃあ気になる興行収入の方はというと……残念ながら惨敗。

ソナチネ」の一作前の「あの夏、一番静かな海。」も同じく批評家ウケしたものの興行は失敗に終わっていて、その際怒ったビートたけし

どいつもこいつもガン首揃えて俺の映画を褒めてくれたんだぜ。あの淀川さんだって『たけしが好きになった』っていってくれたし、おすぎにしても誰にしてもいい映画だっていったじゃない。おまけに「日本映画ペンクラブ」が推薦映画にしてくれたらしいんだけど、“へ″の突っ張りにもなりゃあしない。そんな推薦なんかいらねーぞ、チクショー!

          『映画評論・入門 観る、読む、書く』モルモット吉田内の引用から

と発言しています。うーん、映画ブログなんてやってる身からすれば実に耳に痛い話です。

ま、そんな話は置いといて中身行きましょう中身。

あらすじ

※〇〇組組長▽▽とか書いてると非常に読みづらい文章になるので単純化してお伝えします。

上司のヤクザ「おい村川(ビートたけし)、沖縄でちょっと揉め事が起きてるみたいだから何人か手下連れて行って抗争終わらせてきてくれねぇか」

村川(ビートたけし)「なんだよ、めんどくせぇ。オイラいい加減ヤクザやんなっちゃったぜ」

上司のヤクザ「そんな事言わないで、行くだけでいいから」

一同沖縄へ

村川「おい! 行くだけでいいって話じゃなかったのか! 来た途端組員撃たれて死んじまったじゃねぇか、バカヤロー」

村川「仕方ねぇ騒ぎが収まるまで沖縄で隠居してるか」

村川と愉快なヤクザ達の夏休みが幕を開ける……!

コント「ヤクザの夏休み」

ソナチネ」、パッケージの銛に刺されたナポレオンフィッシュが不気味でいかにもバイオレンスたっぷりの怖い映画に思えますが、「アウトレイジ ビヨンド」みたいに自分の指噛みちぎったり、ドリルで頭に穴開けたりはしないのでご安心を。

むしろ「ソナチネ」の半分は「ほのぼの」で構成されています。ヤクザが沖縄まで来たけどやる事もないから遊ぶ。花火したり、紙相撲したり、落とし穴作ったり、普段は強面のヤクザが無邪気に遊んでいるギャップが笑えるんですね。

光と闇のコントラスト

人間紙相撲に代表される昼のシーン

北野武の映画では海や空を透き通った真っ青に撮るため、北野映画を語る時よく「キタノブルー」という言葉が使われます。そして「ソナチネ」もとにかく青が画面に映えて美しい。

昼間の太陽が輝いているシーンの空はとにかくすがすがしい青で、その青をバックに赤やら緑のカラフルなアロハを着たヤクザがぽつぽつと映っているのが、これまたいい。

特に寺島進勝村政信が人間紙相撲をするシーンは格別で、このシーンはストーリー上何の必要性もないにもかかわらず有名な場面です。


ソナチネ Play on the sands - 久石譲

全てが濃紺に染まる夜

昼間のすがすがしい青と対比するように配置されるのが、夜のシーン。ナイトシーンは昼のシーンに比べると目立たないので印象に残っていないかもしれませんが、注意して見てみると「ソナチネ」には昼のシーンにも劣らぬくらいナイトシーンが入っているのがわかります。

このナイトシーンの色味もまた魅力的で、昼のシーンと同じく青みがかっているので画面全体が濃紺に染まっているんですね。その濃紺が沖縄の自然と相まってもうそれはそれは神秘的で、なんとも哀れなんですね(淀川風)。

細かく演出されたキャラクター

北野映画ではたけし軍団や邦画の大御所など監督のお気に入り俳優が繰り返してキャスティングされる傾向がありますが、「ソナチネ」も寺島進大杉漣などいつもの面々が登場しています。彼らの演じるヤクザはヤクザらしくもありながら愛嬌があって、見れば見るほど北野武って本当に役者を立てるのが上手い監督だと実感させられます。

寺島進

寺島進の演じる村川の部下ケンは初めはいかにも堅物というか、何故かどのショットでもいつも真正面を向いて表情を動かさず(つまりずっと真顔)黙ったまま。真顔なんか映してどうすんだ、と思うかもしれませんが寺島進は強面だから、これが意外と真顔でも画が持つんです。

そして沖縄で勝村政信演じる良治と仲良くなってくると表情もほぐれてきて途端に饒舌になります。寺島進は黙らせればカッコよくて、喋らせるとオモシロい。北野映画のマスターピースですよ。

寺島進のアニキに聞けよ!―困ったときはいつでも来い!

寺島進のアニキに聞けよ!―困ったときはいつでも来い!

 

 

大杉漣

村川の部下の中でもう一人目立つのが大杉漣演じる片桐。村川に対してはやたらと礼儀正しく、村川ら他のヤクザがスーツを着崩すのに対して片桐だけはフォーマルな着こなしで胸ポケットにはポケットチーフまで。

けれども片桐はキレると怖いタイプのようで、冒頭から「ヤクザなめてんじゃねぇぞ! 攫っちまうぞ!」と迫真の怒号を見せてくれます。あれですね、学校で怒られて一番おっかないのは普段優しい先生っていう、あれ。

現場者―300の顔をもつ男

現場者―300の顔をもつ男

 

 

北野映画のつくりかた 

形骸化したストーリー

 当たり前の話ですが、普通映画にはストーリーがあります。例えば「スターウォーズ ep4」は「ルーク・スカイウォーカーが自らの使命に目覚めて、大量破壊兵器デススターを破壊する」というストーリーがあります。またストーリーにはほとんどの場合「目的」があって、エピソード4なら目的は「デススターの破壊」ですよね。

ところが北野映画はぶっつけ本番でどんどん脚本を変更していく撮影法も関係してか、「ストーリーの目的」と呼べるものがほとんど無いに等しいんですね。

「ソネチネ」の主人公村川は抗争を手打ちにするために沖縄に送り込まれますが(目的)、実際に沖縄へ行くと手打ちどころか抗争が激化していてどうしようもない。そして「ストーリー上の目的」を達成できなくなった村川たちは、とうとう沖縄の浜辺で暇を潰し始める、と。ストーリーが途中で横滑りしてあらぬ方向に行っちゃってます。

ソナチネ」のストーリーをスターウォーズに置き換えてみると「ルークはデススター破壊のためデススター潜入を試みるがあえなく失敗、仕方なくルーク一行はナブーでひと夏のバカンスを楽しむ(その後ハン・ソロやチューイを帝国に殺されたルークが一人で帝国軍を滅ぼす)」という感じでしょうか。めちゃくちゃですね、だって「ソナチネ」のストーリーもめちゃくちゃですもの。

 

コントだからストーリーがない

ビートたけし浅草フランス座での芸人下積み時代にストリップショーの幕間でひたすらコント の実践を積んできたわけですが、このフランス座での経験は明らかに北野の映画作りに生かされています。

コントと漫才は混同しがちですが、コントの特徴は「劇」であること。芸人がそれぞれ警察官なりヤクザなりを演じて状況を演出し笑いを撮るのがコントです。つまりコントはお芝居ですから、コントの技術・演出力は映画の作劇にも生かされるはずです。

北野映画は突き詰めれば、ショートコントを繋げて繋げて一時間半程度にまとめ上げたものです。北野映画のストーリー性が希薄なのは、コントにはストーリー性も、ストーリー上で達成すべき目的もないからなんですね。

 

 

さて長くなりましたので今回はこのあたりにしておきます。「ソナチネ」もBlu-ray出るので、キタニストのみなさんはマストバイ。

 

ソナチネ [Blu-ray]

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 以上もゆるでした(twitterフォローお願いします!)。