【宮崎駿】「カーズ/クロスロード」前におさらいしたい「カーズ」【ジョン・ラセター】
今週末よりシリーズ3作目である「カーズ/クロスロード」が公開されるピクサー長編アニメーション「カーズ」。
この記事で3作目の公開に向けて、大人も子供も楽しめる傑作「カーズ」の魅力について紹介したいと思います。
目次
「カーズ」
喋る車の物語
「トイ・ストーリー」から始まったピクサー長編映画の第7作目「カーズ」は、まさかの車擬人化モノでした。
それまでのピクサー作品も擬人化という手法を使ってはいました。「トイ・ストーリー」はおもちゃ、「バグズ・ライフ」は虫、「ファインディング・ニモ」は魚、人でない存在をあたかも人のように扱う擬人化は実写ではできない、アニメーションならではの表現です。
でもそれにしたって車を擬人化するなんて発想がさすがアメリカ人といった感じです。
フロントガラスが白目になってて、そこにポツンと瞳が浮かんでるなんてデザイン思いつきます?
監督ジョン・ラセター
「カーズ」の監督はピクサー成功の立役者ジョン・ラセター。ラセターは長編3作目の「トイ・ストーリー2」以降監督から離れ製作総指揮やプロデューサーに回っていましたが、7作目にして監督にカムバックしました。
あらすじ
レース界に稲妻の如く現れたニューカマー、ライトニング・マックィーン。「ピストン・カップ」にて史上初の新人チャンピオンを目指す彼は天才的な走りで他車を圧倒、誰もがマックィーンがトロフィーを手にすると確信していた。
しかし途中まで首位を独走していたマックィーンは仲間を信用しない傲慢さのためにパンクを起こし、レースは三台同着で終わってしまう。
マックィーンは一週間後の決勝レースのため開催地のカリフォルニアに向かうが道中で事故を起こしてしまい、寂れた町ルート66で逮捕されてしまう。果たしてマックィーンはレースに間に合うのか……
宮崎駿を泣かせたアニメ
子供から大人まで楽しめる普遍性を持ったストーリー、美麗で質感にこだわられた映像、車種や人種ごとの特徴を捉えたキャラクターなど褒めるべき点はいくらでも見つかりそうな本作ですが、実はあの気難しい天才、宮崎駿までもが「カーズ」をベタ褒めしています。
宮崎駿監督絶賛のコメント付『カーズ』新聞広告。
— 叶 精二 (@seijikanoh) 2014年1月17日
ナルシスティックで傲慢な若者が、ある種の挫折や環境変化によって社会を知り、精神的成長を遂げるーという内容は無数に変奏されて来た展開ですが、現代でも訴求力を有していると思います。 http://t.co/owvLuv5GJm
この映画はジョンそのものの映画だ。
正直に自分の心情を描いたと思う。
よくやった! 涙が出た!
元ジブリの米林監督の最新作である「メアリと魔女の花」には、「俺は見ない」とまで言っちゃうあの宮崎駿が! 「よくやった! 涙が出た!」ですよ。これはエライことですよ。
一体宮崎駿は、「カーズ」のどこに惹かれたのでしょうか? 少し考えてみましょう。
「カーズ」はジョン・ラセターの半自伝映画
上で引用した新聞広告で宮崎駿も「この映画はジョンそのものの映画だ」と言っていますが、まさしく「カーズ」には監督ジョン・ラセターの自伝的側面が含まれています。
岡田斗司夫さんのブロマガで、「カーズ」の自伝的側面について書かれたものがあったので引用します。
ジョン・ラセターの『カーズ』というディズニー映画でピクサーの出来のいいアニメがある。ただのCGアニメだと思ってる人が大部分なんだけども、実はカミングアウト作品なんだ。
車が田舎の町に行く、そしたら田舎の町が打ち捨てられていて滅びていく、そこでは車に乗る文化が失われつつある、みたいな事を描いてるの。でも、言っ ちゃえばジョン・ラセターの、「俺はハリウッドに行って、ディズニーにも雇われて、自分の好きな映画作ってる。だけど俺が生まれ育った町はどうなのか?」 というアメリカ人のアイデンティティーが関わってくる。それは別に悪い事じゃないけど、「自分がメジャーになる事によって、忘れていた故郷は今、どうなっ ちゃってるのか?」みたいな問題が出てくるわけ。でも、それは宮崎駿作品に全然出てない。宮崎駿の出身がどこかわかる? 実はあの人は東京出身なんだけ ど、まるで地方とか田舎がいいように描いてるじゃん?(笑)。
ピクサーとジブリの圧倒的な違い
「カーズ」冒頭でマックィーンは、自らのピットクルーを一切信用していません。彼が信じているのは自らの走りの才能だけです。本作はそんな傲慢なマックィーンが徐々に認識を改め、仲間のかけがえのなさを学んでいく映画でもありますが、「一人で突っ走るマックィーン」と「協力することの大切さを知ったマックィーン」はある二つのアニメスタジオの象徴のようにも読み取れます。
監督の才能任せで突っ走ってるスタジオ、ありますよね? そう、ジブリです。
監督が独断で動かず多くのスタッフに発言権のあるスタジオ、ありますよね? ピクサーです。
ピットインせずひたらすら走り続け、挙句の果てにパンクを起こしたマックィーンを見て宮崎駿は何を思ったのでしょう。
「カーズ」は宮崎駿には作れない映画だった
「監督の自伝的な側面を持っている」、「監督の独断でなく階級の低いスタッフからの意見も取り入れて作る」など「カーズ」は宮崎作品・ジブリ映画がやらない事・できない事を真向からやってのけました。
「カリオストロの城」に心酔しアニメを作り続けてきたラセターが、憧れの宮崎作品とは全く違った方向性でアニメーションの限界を破って作った映画、それこそが「カーズ」なのです。
「カーズ/クロスロード」への期待高まる
先日、大方の予想通り引退宣言を撤回した宮崎駿にラセターはこのようなメッセージを寄せています。
「ミヤザキさんにはまだ伝えたい話がいっぱいあるんだって。マックィーンのように彼も走り続けるだろうね!」
「カーズ/クロスロード」では、マックィーンは既に新米レーサーではなく、逆に若手レーサーにチャンピオンの座を脅かされ立場のようです。またホームページのあらすじにはこのような文言があります。
「いったい自分はいつまで走り続けるのか?」
被ります、引退宣言を撤回し再びペンを手に取ったパヤオが! マックィーンに!
どうやらラセターはまたもパヤオの涙腺を揺さぶりにきたようですね……。
そんなワケで色んな意味で大期待の「カーズ/クロスロード」は7/15(土)より全国公開です。
Twitterのgif眺めてたら「ポップコーン」とかいう使用用途の全く不明なタグを見つけた pic.twitter.com/sH9Jq0K67E
— もゆる@映画ブログ (@moyuru2580) 2017年7月11日