【感想・解説】ウディ・アレン初心者のための「カフェ・ソサエティ」
ウディ・アレンという映画監督を、皆さんはご存じでしょうか。
40年以上もの間毎年のように映画を撮っているウディは、もちろん映画監督の中では有名な部類です。しかし、彼の映画は小規模なものが多く派手な広告も打たないため、ウディ・アレンについては名前くらいしか知らない方も少なくないのではないでしょうか。
5/5より日本での公開が始まった「カフェ・ソサエティ」は実にウディらしい作品です。そこで、この記事では「カフェ・ソサエティ」を参考にウディ・アレンの“ウディらしさ”について解説したいと思います。
目次
あらすじ
時は1930年代、黄金期真っ只中のハリウッドに一人の青年が足を踏み入れた。
青年の名はボビー、彼は大物エージェントである叔父の雑用係を勤めながら、仕事の何たるかを学んでいく。
仕事を続ける中、やがてボビーは叔父の秘書ヴォニーと惹かれ合いだすが、彼女には既に恋人がいた。さらにその恋人はボビーの叔父フィルその人でボビーの恋愛模様は混迷を極める……
ウディ・アレン映画の主人公
ウディ・アレンの人柄
“私を会員にするようなクラブには入りたくない”
「アニー・ホール」
スタンダップコメディアン上がりのウディは、自らの監督作品に主演出演することが多く、彼のフィルモグラフィで最も有名な「アニー・ホール」(1977)も、主演はウディ・アレン当人となっています。
大きな黒縁メガネがトレードマークの彼はお世辞にも二枚目俳優とは言いがたく、それどころか彼のルックスはイケてない男のテンプレートそのものです。
ウディが演じる主人公は総じて早口で小難しい話ばかりしています。また自らがユダヤ人であることにコンプレックスを感じる一面もよく見せます。
今の言葉でウディを表現するなら、まさしく「こじらせ」男という言葉がぴったりでしょう。インテリ人を揶揄するわりに自分も形而上学的な話ばかりしていて、めんどくさい奴です(そういう所が愛らしい部分でもあるのですが)。
しかしそんなウディですが、実生活でも劇中でも意外と(失礼)モテます。そして彼がモテることは彼の作品を語るうえで非常に重要になってきます。
主演へのウディ像の投影
彼の作品はたとえウディが主人公を演じない場合でも、主演の役者がウディ・アレン的な立ち振る舞いで演技を行います。
「カフェ・ソサエティ」の主演はジェシー・アイゼンバーグ。ユダヤ系であるジェシーは早口などウディとの共通点も多く、今回彼の演じるボビーからも強いウディ臭が漂っています。
ウディ・アレンと浮気
さて映画監督として名をはせるウディですが、同時に彼はスキャンダルの多い業界人としてもよく知られています。
中でも当時のパートナーだったミア・ファローとの間の養子とウディの交際が発覚したエピソードは、ウディを知らない人が聞いても驚いてしまいそうな話です。ちなみにこのスキャンダルには続きがあり、その後ウディは養子と結婚しています。
彼の映画の多くは恋愛映画なのですが、浮気スキャンダルで吹っ切れた彼は主人公が浮気をする映画をやたらと撮るようになります。
「マッチ・ポイント」(2005)なんかはほとんど浮気の話だけで映画一本成立させてますし、もちろん「カフェ・ソサエティ」でも浮気は重要なテーマのひとつとして扱われています。
本まで書いちゃう
ウディ・アレン永遠の命題
ウディ映画もう一つの特徴として、死の恐怖についての考察が入っていることは欠かせないでしょう。
フィルモグラフィに「ウディアレンの愛と死(原題“Love and Death”)」というタイトルがあることからも、彼が愛と死を対照的なものとして考えているのは間違いありません。
恋愛映画にすら死の恐怖というエッジの効いた話を紛れ込ませるのはウディらしいという他ないですね。
「カフェ・ソサエティ」評
ウディの話ばかりで「カフェ・ソサエティ」についてあまりにも語っていなかったので、この章では当該作の感想を語ります(※ネタバレはしませんが気になる方は飛ばしてください)。
本作がいつも通りウディらしい映画なのは既に語りましたが、ジェシー・アイゼンバーグが主人公を演じていることはやはり特筆するべきでしょう。ジェシーは二枚目でありながらどこか童貞感、ダメ男感を醸し出すのも得意な俳優でありそんな彼は、まさにウディ的主人公像の投影先にぴったりといえます。というか、ジェシーのどもり交じりの早口ほんといいですね。アカデミー早口賞があったら毎年ジェシーが取りますよ。
あとは1930年代を再現した映像もファビュラス! 服や建物などはベージュを基調としており、また橙色照明をふんだんに使ったおかげでゴージャスかつレトロな質感が作品全体に漂ってます。
ラストの展開から「ラ・ラ・ランド」を連想したのは私だけ……?
あとがき
実は私もウディ・アレンの映画を全部見たわけではないので、この記事は知ったかぶりもいいところなんです、ごめんなさい。ですが、当記事をきっかけに彼と彼の映画に触れてくれる方が一人でも増えれば記事を書いた意味も出てくるので、「カフェ・ソサエティ」ぜひ劇場でご覧ください!(過去の作品ならやはり「アニー・ホール」から入るのがオススメです)。
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