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実写版「美女と野獣」にイマイチ共感できない理由を考察してみた

つい先日アニメ版、実写版と立て続けに「美女と野獣」を鑑賞した私ですが、そんな私の心には本作への何か言語化しきれないもやっとした感情が渦巻いていました。

そして最近もやっとした感情の正体がある程度見えてきたので、今日は私が「美女と野獣」を観て感じたモヤモヤの正体について書こうと思います。

目次

美女と野獣」の教訓

見た目で人を判断する王子が醜い老婆を差別したため魔女に恐ろしい野獣に変えられてしまうところから「美女と野獣」の物語は幕を開けます。

この寓話が私たちに「人を見た目で判断してはいけない」という教訓を語りかけているのは明かです。

現代社会は見た目至上主義

私たちの生きる社会はとにもかくにも見た目が大事。「※ただしイケメンに限る」という言葉がちょっとしたブームになったこともあったように、顔のいい人はさまざまな面で得をするのが現代社会の常です。

もちろん内面だって人間を構成する重要な要素なのですが、第一印象はほとんど見た目だけで決まります。

そして厄介なのは見た目は持って生まれるもので、そう簡単に変えられないことです。

だからこそお世辞にも顔が良いとは言えない、まさに今パソコンに向かってキーボードを叩いている私のような人たちは、世間一般でいうイケメン・美女に羨望し同時に強く嫉妬するのでしょう。

美女と野獣」はブサイク非モテを救えるのか?

「人は見た目じゃない」と語る「美女と野獣」は、はたしてイケメン・美女の日陰で燻る非モテたちの心を少しでも救済できたのか?

残念ながらこの問いの答えについて、私にはNOというほかありません。

なぜなら、「野獣の醜さ」と「非モテのルックスの悪さ」は本質的に異なるものだからです。

絶対的な醜さと相対的な醜さ

美女と野獣」の野獣はその姿を見られるだけで、怖がられ悲鳴をあげられる存在です。まあ毛むくじゃらで角が生えてて顔も獣そのものなんですから当たり前ですね。野獣がモテない原因は根本的に野獣の見た目があまりにも恐ろしいからです。

ルックスを100点満点で表現するならそもそも人間でない野獣は0点どころかマイナス10000点ぐらいの存在なんです。

しかし、非モテの悩みというのは別に街角で歩いていたら女性に悲鳴をあげられた、とかそんなことではありません。

非モテの悩みとは、自分より顔の良い奴には妻なり彼女なりがいるのに自分は独り身である、というのに尽きます。非モテと言っても同じ人間なんですから、ルックスの差は0点から100点の間の幅に過ぎないわけです。

つまり、野獣の醜さは絶対的なものであるのに対して、現代社会の非モテの醜さは相対的なものなのです。

言い換えれば野獣の持つ悩みが自己嫌悪なら、現代非モテの悩みは嫉妬だということです。

美女と野獣」に共感しにくい理由

本作は絶対的な醜さが救済される物語に過ぎず、相対的醜さに苦しめられている現代人の心を揺さぶるには力不足だったと言わざるをえません、

美女と野獣」の中で相対的醜さに関連するキャラクターはル・フウぐらいなものです。モテモテのガストンの傍にいつもいるル・フウはデブでチビで顔も良くありません。

ル・フウがガストンに向ける羨望と嫉妬の入り混じった眼差し、それこそが本当に現代人に共感されうるものではないでしょうか。

ル・フウがゲイとして描かれたのはそれはそれで素晴らしいのですが、相対的な醜さについて描くとしたらル・フウを異性愛者のままにしておいても良かったのかもしれません。

空から女の子型のご都合主義なストーリー

元がディズニーアニメなのであまり重箱の隅をつつくような真似はしたくないのが本心ではありますが、本作が感情移入しにくいもう一つの理由として書いておきたいのが美女と野獣」のご都合主義についての話。

結局野獣はベルがたまたま城を訪れたおかげで呪いが解けたわけで、もしベルが城を訪れていなければ間違いなく野獣たちの呪いは解けないままだったはずです。

その点において、「美女と野獣」はラブコメ漫画・アニメの「いきなり『~だっちゃ』喋りの女の子が現れた」とか「引きこもりの家に日本引きこもり協会から美少女が来た」というご都合主義な始まり方と何ら変わりありません。

ご都合主義ラブコメを揶揄するつもりはありませんが、あまりにも都合の良い展開は受け手の共感を著しく妨げます。

しかし、実写化してもファンタジーであり続けさせるのがディズニー実写化シリーズのやり方なんでしょうから、これ以上文句をつけるのはやめておきます。

 

美女と野獣」に納得できなかった人に勧めたい映画

さて、甘ったるくて都合のいいファンタジーじゃ俺のリビドーと嫉妬は収まらないぜ、というそんなあなたにとっておきの作品をご紹介しましょう。

ヘルタースケルター

それは「ヘルタースケルター」です。監督:蜷川実花 主演:沢尻エリカ

度重なる美容整形でブサイクから一転カリスマモデルまでのし上がった主人公りりこは、美女であると同時に野獣でもあります。

見た目至上主義の社会に翻弄されながら生きる儚い一人の「美女と野獣」の物語は、見た目で苦悩する現代人なら共感できること間違いなしです。

あとがき

なんだか実写版「美女と野獣」をボロカスにこき下ろすような記事になってしまいましたが、「美女と野獣」は映画としての出来は非常にいい素晴らしい映画ですよ! GWは「美女と野獣」で決まりですよ!

だからディズニーの広報関係者の皆さんはこの記事を読んでも何の法的措置も取らないでくださいね!

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