【感想・レビュー】甘くて、儚い非モテ少女の恋「スウィート17モンスター」
「青春」なんて言葉はどこかいい響きに聞こえるかもしれませんが、ずっと異性とイチャついてばかりで毎日が楽しくて仕方ない、なんて青春を送った人は意外と少ないんじゃないでしょうか。
むしろ大多数のティーンエイジャーはつまらない毎日にうんざりしてて、若い熱情を持て余して悶々としていたはずです。
今日紹介する映画はそんなモテない高校生の青春を現実味たっぷりに描いた良作、「スウィート17モンスター」。あの小島監督もオススメされていた作品です。
4月中旬から6月頭にかけて日本公開される映画でのオススメはこれ。 pic.twitter.com/QBF9ewpNvb
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) 2017年4月15日
目次
あらすじ
友達もいなければ、彼氏なんてもってのほか。パッとしない女子高生ネイディーンの毎日は波乱万丈。
家族との仲がよろしくない彼女にとって、ただ一人気を許せるのは親友のクリスタだけ。それなのにクリスタは酔った勢いでネイディーンの兄とベッドイン、そのまま2人は恋人同士になってしまう。
非モテの此岸に一人取り残されたネイディーンは叫ぶ。
「どうして私だけこんな目に遭うの?」
等身大の17才の恋の行方は如何に。
主人公のルックスが完璧
映画においてヒロイン(主人公)の見た目が重要なのは言わずもがなですが、本作の主人公のルックスは普通の映画とは逆の方向、つまりカワイくない、美人じゃない方向に振り切れています。
私が思うに、この映画最大の見どころは何を隠そうネイディーンのルックス。彼女は顔からファッション、そして立ち振る舞いまでとにかく非モテオーラがだだ漏れなんです。
本作の主人公ネイディーンを演じるのはヘイリー・スタインフェルド。「トゥルー・グリッド」でアカデミー賞にノミネートされ、最近では「ピッチ・パーフェクト2」に出演していたのが記憶に新しい若手女優さんです。
不思議なのはググって出てくるヘイリーの見た目は別に全然悪くないのに(失礼)、スクリーンに映っているネイディーンはいかにもモテなさそうに見えることなんですよね。
ほとんどいじってなさそうな太い眉毛に、やたらと目立つ鼻の穴、あとスーパーの服売り場にありそうなダサいジャケットと、スニーカー、それで性格も良くなかったらそりゃモテないよっていうね(笑)。
非モテ少女が主人公である本作でダサい少女を演出することは何にもまして重要であり、結果ネイディーンは見事「ザ・非モテ」な仕上がりになっています。
リアルすぎる恋の葛藤
本作は全編を通してリアルな17才の日常を描いているわけですが、とりわけ現実味を感じるのは恋愛を巡るドタバタです。
ネイディーンは同じ高校のニックというイケメン学生に片思いしているんですけど、このニックってのがいかにもリア充そうなイケメンなんです。ネイディーンとは明らかに住んでる世界が違う男、スクールカースト上位にいる奴です。
そして、ニックには手が届かないなとネイディーンが諦めかけている時に彼女にアプローチをかけてくるのが、アジア系の男の子アーウィン。アーウィンは喋り方がどこかぎこちなくて、童貞臭い。
ネイディーンはニックに憧れる一方で、あまりカッコよくないしタイプでもないけど自分を好いてくれるアーウィンにも惹かれます。
ただネイディーンは2人のどちらと付き合うかで葛藤したりするわけではなく、「ニックと付き合うのは無理そうだから、アーウィンくんで我慢しとこう」みたいな思考回路なんですよ。悪い言い方をすればキープです。
もう男としては黙って見てられませんよ。
やっぱり女は顔なのかと、優しいブ男より話したこともないイケメンなのかと。
ふざけんな!
アメリカ社会と車
その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールをまかせるな
-「宙船」
アメリカは車社会であり、映画を観ていても本当にどいつもこいつも移動手段は車ばかり、映画の主人公も多くの場合免許を持っていて車を運転します。
しかし、ネイディーンは免許を持っておらず、いつも親か兄弟が運転する車の助手席に乗っています(高校へは毎朝お母さんが毎朝送ってくれる)。
「だから何?」と疑問に思われるでしょうが、彼女が自ら車を運転しないのには非常に大きな意味が込められているはずです。
この映画における運転とは、そのまま人生を生きることの比喩になっているのです。つまり、親に運転してもらっているネイディーンは、自らの人生のハンドルを他人に明け渡しているも同然だということ。
本作を鑑賞するときは、「運転」というキーワードを意識しながら観てみてください。そうすればクライマックスで彼女が取る行動の意味がより深く理解できます。
※ちなみに2016年のアメリカの免許保有割合、16才は25パーセント弱となっています。
http://jp.wsj.com/articles/SB10152201462225363779004581493120878011908
あとがき
ティーンエイジャーの心情をみずみずしく表現した映画は過去にも存在しますが、時代時代によって十代の恋愛感や人生観は変わりますから定期的なアップデートがあって然るべきです。
その点「スウィート17モンスター」はSNSを作劇の中に上手く取り入れたことも含め、現代に相応しい青春映画に仕上がっています。
いま十代の方はもちろん、かつて17才だった頃の甘酸っぱいエモーションを取り戻したいあなたも、こぞってご鑑賞ください。
※上映館が少ないのでお気をつけて!
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