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【ネタバレ・感想】イップマンというヒーロー像「イップ・マン 序章」

今の時代、ヒーローと言えばカラフルなコスチュームに身を包んで空を飛び回るマーベル・DC連中のことを意味しますが、ブルース・リーのようなカンフースターがヒーローとしてもてはやされた時代があったことを忘れてはいけません。

今回紹介する映画は、アクション界での存在感が薄くなりつつあったカンフーに大々的にスポットライトを当てた珠玉の名作「イップ・マン 序章」。

この記事では「イップ・マン 序章」のストーリーをざっと紹介しつつ、本作のどこが面白いのかを解説します(軽いネタバレを含みます)。

イップ・マン 序章 (字幕版)

目次

トーリーと解説

 イップ・マンという男

本作は事実に基づいて撮られた作品であり、従って主人公のイップ・マンも実在する人物です。

しかしおそらく、当記事を読んでいる皆さんの多くが「イップ・マンって誰じゃいな」状態でしょうが、「イップ・マン 序章」は彼の人となりについてしっかりと劇中で語ってくれます。

1930年代、武館(武術を教える道場)が軒を連ねる中国の佛山でイップ・マンは妻と子供と共に暮らしています。イップ・マンは詠春拳と呼ばれる武術の達人で、いつも彼の元には弟子志望の若者が集ってきます。

カンフーの達人でありながら優しい心根を持つ彼は佛山の住民から熱い信頼を受けており、また元来裕福だったため何一つ不自由することなく暮らしていました(ただカンフーに明け暮れすぎて嫁さんが終始不機嫌なことを除けば)。

日本軍の侵略

しかし1937年より日中戦争が幕を開け、佛山は日本軍に占領されてしまいます。イップ・マンも自身の屋敷を日本軍に没収されてしまい、一気に極貧生活へと身を落とすことになります。

まともな仕事のない中、彼は家族を食わせるため肉体労働者となり働くことを選びました。この時のイップ・マンの落ちぶれぶりは観ていて涙が溢れます。いくらカンフーが上手かろうが、戦時中の貧困を前にすればそんなものは何の意味もないわけです。

ここでステレオタイプのカンフー映画なら、カンフーで悪者を倒してめでたしめでたしとなりますが本作は違います。なんたってこの映画の悪者とは他ならぬ日本軍であり、日本軍は一人の人間ではどうしようもできないだけの武力を保有しています。近代戦争にも貧困にも、イップ・マンの最大の取柄である詠春拳は無用の長物なのです。

先ほど泣けてくると書きましたが、それは単に貧しい彼がかわいそうだから泣けるとかそんな単純な話ではなく、自身のアイデンティティであるカンフーを全否定されたイップ・マンに感情移入するからこそ彼に同情できるのです。

映画として今作が非常にエポックメイキングなのは、イップ・マンをカンフーなら敵なしの無敵の男と演出しながらも、彼のカンフーが上手く役に立たない戦時中という舞台に彼を配置した点でしょう。

アメコミヒーロー映画ってつまるところ戦いさえすれば問題が解決するケースがほとんどなわけで、どうしても緊張感に欠けてしまいがちですが、その点「イップ・マン 序章」はよく考えられているなと感じますね。

空手道場

さて肉体労働を続けなんとか食いつなぐイップ・マンですが、ある時日本軍が彼の職場に訪れてそこで働いていた数人の元拳法家を連れていきます。

日本軍の目的は中国武術と日本武術を戦わせること。空手の達人である現地での日本軍の責任者三浦は、勝てば米を与えると言いそれをダシに日本人と中国人の格闘をセッティングしていたのです。

綿花工場

空手道場の話と平行して語られるのが、イップ・マンの友人チョウ・チンチュンが経営する綿花工場の話。

日本軍に蹂躙され荒廃した中国国内、佛山でも元拳法家の男たちが町中で略奪行為をはたらいており、チョウの綿花工場も略奪の標的にされます。

日本軍だけでなく同じ中国人からさえ搾取される人びと、見かねたイップ・マンは工場の従業員たちを相手にこれまで頑なに拒んできた詠春拳の指導を始めます。

銃で武装した軍隊には無意味だったカンフーですが、斧のような近接武器で武装する略奪集団相手ならばその真価を発揮します。

イップ・マンは自らが戦って人々を守るだけでなく、人々に詠春拳を教えることで自衛手段を与えたのです。

もうね、一人で自警活動ばっかりやってる「ダーク・ナイト」のバットマンに「イップ・マン」を見せてやりたくなりますよ。

決闘

そしてある事件をきっかけに、日本軍将校三浦にそのずば抜けた実力を披露することになったイップ・マン。三浦はイップ・マンとの手合わせを所望しましたが、家族に危険が及ぶのを避けるため彼は戦いを拒否します。

しかし三浦も諦めることなく彼の捜索を続け、やがてイップ・マンが佛山の綿花工場でカンフーを教えていることを突き止めます。

工場の従業員たちを人質にとられ、仕方なくイップ・マンは三浦と戦うことになりました。カンフーと空手、イップ・マンと三浦、果たして勝るのはどちらなのか……というあたりでストーリーの解説は終わっておきましょう。

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 ここがすごいぞイップ・マン

演技もうまいぞドニー・イェン

主人公イップ・マンを演じるのは「ローグ・ワン」で盲目の僧侶を演じたドニー・イェン。今や全世界、いや全宇宙を股にかけるカンフースターです。

彼のアクションが上手いのは当然ですが、今作はドニー・イェンの演技も冴え渡っています。温厚ながらも芯のしっかり通った強い精神を持つ男って感じです。

美人でスタイルのいい奥さん役と横に並ぶとドニー・イェンの方が背が低いのですが、それも可愛げがあって素晴らしいですね。

ドラマも泣けるぜイップ・マン

トーリー解説の部分でも書きましたが、「イップ・マン」シリーズは事実を元にした人間ドラマとしても秀逸な出来であり、ドニー・イェンを始めとした名優たちの演技にも支えられてアクションシーン以外も見応え抜群。

日本軍があからさまな悪役として出てくるので、日本人としてはどうしても後ろめたさを感じてしまい、それが鑑賞の邪魔にならないでもないのですが誰が見てもきちんとイップ・マンという主人公に共感できるような脚本になっているので安心して観てください。

 

やっぱり最高カンフーアクション

いや、もう当たり前すぎてあえて書かなかったんですけど、やっぱりこの映画のカンフーは最高ですよ。

アクション監督にサモ・ハン・キンポーを添え、役者のドニーもカンフーアクションを熟知しているわけですから、そらアクションに迫力があるに決まってます

アクション映画ってCG使わなくてもここまでカッコよく撮れるんだと、感動です。

まとめ

タイトルに序章とついていて、続編が二つありますが本作一本だけでも映画としてしっかりまとまった作りになっているのが「イップ・マン 序章」です。二時間に満たない映画なので観る映画を迷った方にはおすすめな一作です。

ちなみに「イップ・マン」三部作(ドニー・イェンが主演の)の三作目「イップマン 継承」は4/22より公開予定。彼の弟子であるブルース・リーとイップ・マンの関係についても語られるようです。

二作目の「イップ・マン 葉問」の記事も近々上げるのでお楽しみに!

 

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