“ほぼ”デイリーシネマ

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【ネタバレなし】「哭声 コクソン」鑑賞の補助線とレビュー

見る者を渾沌へと誘う新感覚映画

みなさんは韓国映画にどのようなイメージを抱きますか?

比較的映画を見る習慣のある方でも、韓国映画をよく見るという方は少数派だと思います。

映画雑誌のカラーページは大抵ハリウッド作品か邦画が占領し、韓国の作品はいつもモノクロページに押しやられています。

ですが、それは韓国映画のクオリティがハリウッドに比べて低いということを意味しません。

理由ですか? 理由は韓国映画を見ればわかります。

今回紹介するのは「哭声 コクソン」

目次


映画「哭声/コクソン」特別映像

 

あらすじ

韓国の山奥にある村に、一人の日本人の男がやってきた。

男が現れて以来、突如発狂した村人による家族殺しが多発。警察官のジョングは立て続けに起こる奇妙な殺人事件の捜査の担当となった。

「事件には必ずあの日本人が絡んでいる」、ジョングはそう確信していた。

しかしジョングの娘にもまた、得体の知れない狂気が忍び寄りつつあった……。

概要

「哭声 コクソン」、この映画のジャンルが何かと聞かれても、私は返答に困ります。

全体としてはホラーのテイストですが、前半はどこかコメディタッチな部分もありますし、お祓いのカットなんかは「怖い」というよりはただ唖然とさせられました。

この映画はジャンルに還元できません。「コクソン」は渾沌そのものです。

 

監督は「チェイサー」「哀しき獣」のナ・ホンジン、撮影の時は鬼のようなこだわりを見せることでお馴染みの監督です。なんでも1カットに2時間かけたりするのが当たり前だとか。

主人公の警察官ジョングを演じるのはクァク・ドウォン、この人は本作が初めての主演らしいのですが、オファーが来た際監督がナ・ホンジンだと知って出演するか相当悩んだようです(下記の國村隼さんのインタビューを参照)。どれだけこわいねん監督。

主人公ジョングはデブで臆病な警官というなんとも頼りないキャラではありますが、映画全体のトーンが暗くなりすぎないように調節する重要な役割を負っています。ジョングが適切に和みを与えてくれるからこそ、劇中の緊張にメリハリが出るというものです。

そして会った人間を発狂させる謎の日本人役に國村隼、監督はキャスティングの際國村さんを一目で見て選んだらしく、それも納得の迫力です。普通の状態で黙ってカメラに映っているだけでも怖い。

日本人の私たちは画面に映っているのが國村隼だと頭では理解できるはずですが、とてもそうは思えません。

表情も動かさない、台詞もない、それなのにスクリーンに映っているのは國村隼ではなく「謎の男」に見える。監督の演出力と國村さんの演技に感服です。

だいたいどんな映画なの?

他の記事や、インタビューなどでも触れられている通り「コクソン」は、「エクソシスト(73)」との類似点がかなり見られます。

この映画は悪霊とそれに取りつかれた村人の狂気についての映画であり、非常にオカルティックな内容です。

しかし単に韓国版「エクソシスト」と言い切るにはこの映画はあまりにも複雑で意味深長です。

映画前半のコメディ+ホラー感

こと映画前半に限って「コクソン」は笑いどころがあります。

その笑いどころというのが結構きわどく、怖がったらいいのか笑ったらいいのかで迷ってしまうカットがちょくちょく出てくるのです。

例えば狂気に落ちてゾンビのようになった村人に主人公が襲われるシーン。初めのうちは怖さを感じますが、狂った村人から引き離されても暴れつづける主人公を見ていたら今度は笑えてきます。

主演のクァク・ドウォンがいかにもコメディ顔で、前半の演技はオーバーリアクション気味なあたりから、この笑いは意図的なもののように思えます。

二時間半という長丁場で恐怖や緊張感を持続させるために、映画前半ではややコメディ色のあるホラー描写を配置したんでしょうか。

ちなみに主人公のジョング、いっつも何か食ってます。アメリカのダメ警官がドーナツ食ってるみたいな感じでいいですね(ネタバレになるので詳細は避けますがこの映画では食事シーンは重要な意味を持っています)。

後半からの物語の加速、そして混乱へ

さて映画も中盤から後半へ差し掛かる頃、いよいよ祈祷師(エクソシスト的な)も現れ映画は緊張感を増しどんどん面白くなってくるのですが、ここから先の展開が厄介です。

本作は明らかにわざと観客を混乱させようとします。

そう、それは「2001年宇宙の旅」でキューブリックが本来あったはずのナレーションをあえて省いたように。

映画秘宝のインタビューで監督は「この映画の解釈は観客次第」という内容の発言をしていました。実際「コクソン」には唯一の解釈、正解の解釈というものはないように私も思います。

「コクソン」はストーリーを読み解くことで面白さがわかる映画というよりも、理解不能の展開や理解不能の映像を楽しむ映画と言えるでしょう。

一度この映画を見始めたら、私たち観客は否応なしにナ・ホンジン監督の作り出した混乱の中に引きずり込まれてしまいます。

映画秘宝 2017年 04 月号 [雑誌]

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まとめと感想

「コクソン」を鑑賞して感じるのはただただ言葉にならない感情です。

たとえば祈祷師がお祓いのため踊るシーン、大音量で鳴る太鼓の音をバックに祈祷師がわけのわからない舞を踊り、鶏と殺しその血を浴び、吊るしてある肉を切り刻む。

視覚的にも聴覚的にもうるさいこのシーンは、まず怖くはありません。ですが鬼気迫った表情で踊る祈祷師を見るとき私たちは、得体の知れない狂気に触れます。

「自分が何を見ているのかわからなくなる」「何を信じたらいいのか、何が正しいのかわからなくなる」、「哭声 コクソン」はまさしくそんな映画でした。

ネタバレありの感想とストーリーについての記事もあげようと思いますので、お楽しみに!

 

※ こちらは上で触れたインタビュー、ネタバレが若干あるのでご注意ください

spice.eplus.jp

 ネタバレありの記事はこちら!

moyuru6673.hatenablog.com