Walking Pictures

映画、書籍、ゲーム、その他もろもろサブカルチャーについて…

Netflixで見られるおすすめ映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

※記事執筆の2017年3/4時点でNetflixで鑑賞可能

さて今日は軽めのレビューを、紹介記事なのでもちろんネタバレはなしです。

第40回日本アカデミー賞の結果が出て日本中がゴジゴジしている中、取り上げる映画はいまさらながら「バードマン(長いので以下略)」。

なぜ今「バードマン」なんだ?と疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。

理由は特にありません。強いて言うならエマ・ストーンのアカデミー受賞繋がりです(2014年のアカデミー賞、エマは「バードマン」で助演女優賞でノミネートされている)。

あらすじ

過去にヒーロー映画「バードマン」でバードマン役を演じ、ハリウッドスターとして人気を博した男リーガン・トムソン。

今や彼の頭は禿げ上がり、体はたるみ、妻とは離婚、娘は薬物中毒。落ちぶれたという言葉はまさしく彼のためのものだった。

リーガンが再び返り咲くために企画していたのは、ブロードウェイでの演劇。しかし予算は不足し、役者にも恵まれず、彼自身の演技も冴えないものだった。

「自分は一生“『バードマン』のリーガン”のままなのか」と苦悩するリーガン。

やがて彼の耳に、もう一人の自分が囁きだす……。

 

スタッフ&キャスト

主人公のダメそうなオッサンリーガンを演じるのはマイケル・キートンティム・バートン版「バットマン」のバットマン役ですね、昔ヒーローを演じて一世を風靡したという点が主人公とオーバーラップしているわけです。

監督はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、すごい名前のこの人は「バードマン」後に「レヴェナント」も撮ってます。

そしてエマ・ストーンがリーガンの娘の薬中を演じます。この人演技が派手というか、顔のパーツが派手というか、目と口をとにかく動かしまくる演技が見ものです。メイクでやつれ感もでててグッド。

あと俳優で特筆すべきはエドワード・ノートンぐらいでしょうか、この映画「ファイトクラブ」っぽいのでノートン見てるだけで感動してきます。

撮影はエマニュエル・ルベツキ、「ゼロ・グラビティ」「バードマン」「レヴェナント」と3年連続でアカデミー撮影賞をとってるバケモンです。

あたかも映画のほぼ全編がワンカットで撮られているかような疑似ロングテイク映像が「バードマン」最大の見どころなのは言うまでもないでしょう(一応書いときますが)。

レビュー

役者や俳優でなくとも人は演じます。人が「演じる」のは、他者に対して自分をよく見せるためなのでしょう(あるいはわるく見せるためかもしれません)。それを心理学ではペルソナと呼ぶらしい。

「バードマン」の主人公リーガンは、かつて自身が演じたバードマンという仮面をなんとか引き剥がそうと苦悩します。リーガンは観客にバードマンでなく「本当の自分」を見てほしい。

そしてリーガンがバードマンのイメージを自身から引きはがそうとすると同時に、この映画自体もマイケル・キートンからリーガンを剥離させようとします。

画面に映っているこの男は果たしてリーガン・トムソンなのかマイケル・キートンなのか、役者と役柄の境界線を今作は徹底してぼかします。“元バットマン”をキャスティングしたのはまさしくそのためでしょう。

キートンがスクリーン上でリーガンを演じ、リーガンが舞台上でメルを演じるという多層構造は、今作が行ったさまざまな映画的試みによって解体されていきます。

リーガンとキートンとメル、映画クライマックスで3人の像がぴったりと重なった時起こる奇跡は、あなたの目でお確かめください。