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“ほぼ”デイリーシネマ

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「ラ・ラ・ランド」ラストシーンについての解釈を語る

夢を叶えるのに必要な代償とは?

アカデミー賞作品賞は、ほぼ間違いなしかと評判の「ラ・ラ・ランド」。

公開初日の朝から見てまいりました。ひとことで感想を述べるなら、大満足としか言えません。オープニングからエンドロールまでとにかくカラフルで、ロマンチックで、そして同時に現実的なテーマもあり、とにかく至れり尽くせりな2時間でした。

今作は国内での注目度も高く、作品の概要については雑誌や他サイトなどで相当語られているため、この記事では概要を書くのはほどほどにとどめておいてラストシーンに焦点をあてて書いています。なのでネタバレを避けたいかたはどうぞブラウザバックして映画を見に行ってください。

あらすじ

夢追い人が集まる街、L.A.(ロサンゼルス)。映画スタジオのカフェで働くミア(エマ・ストーン)は女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末のバーでピアノを弾くセブ(ライアン・ゴズリング)と出会う。やがて二人は恋におち、お互いの夢を応援し合うが、セブが生活のために加入したバンドが成功したことから何かが狂い始める―。

フライヤーより引用 

多用されるある演出

この映画は重要なシーンでの心情描写で、ある特徴的な演出を行います。特徴的な演出とは、ある人物(ミアかセブ)が画面の中央に配置され徐々にその人物を残して周囲が暗くなっていくというものです。

セブが禁止されていたジャズを弾いてしまう場面や、ミアの最後のオーディションの場面で用いられたアレですね。この演出はミアやセブが演技・演奏に集中するあまり周囲の出来事が全く見えなくなっている、という彼らの心情を描いているわけです。

つまり人物の周囲が暗くなっていくのは、物質的な世界を映していたカメラが人物の内面に潜っていくという演出なのです。

Ost: La La Land

 ラストシーンの意味、セブが見た夢

「ラ・ラ・ランド」の脚本は王道と言ってもいいほどまでにシンプルです。

しかしその中で一か所だけ見ていて「えっ!?」と突っかかる場面があります。映画を見た方ならおわかりでしょう。そうです、ラストシーンです。

5年ぶりに顔を合わせたセブとミア。セブが静かに思い出の曲を弾き始めると、例の暗くなる演出が入ります。そして今度は周囲が明るくなったかと思えば、セブがクビにされたシーンに巻き戻っている。

ここから始まる一連の場面はif ストーリー(二人にありえたもうひとつ可能性)なんですね。

Ifストーリーが終わる直前、セブとミアは現実でそうであったのと同じくジャズバーに入ります。ここで明示されるのは「二人が結婚していたら、セブは自分の店を持てていなかった」ということです。

上で述べたように、暗くなる演出は心情描写です。だとしたらifストーリーの場面はセブが「自分たちがあのまま愛し合っていたらどうなっていたか」を考えているシーンだと解釈できます。

回想が終わり、再び現実に戻ってきた時のセブの悲しそうな顔を思い出してください。セブはまだミアを愛しているはずですし、後悔もしていたでしょう。しかしながら同時に彼の心には、夢を叶えられた現実を肯定する気持ちもあったに違いありません(でなければこの映画はバッドエンドになってしまい)。

「セッション」との共通点

監督のデイミアン・チャゼルの前作「セッション」にも、夢を叶えるのには犠牲が伴うというメッセージ性がありました。

主人公のニーマンが最高のドラマーになるためには、教師からの厳しすぎるシゴキに耐えねばならず、また練習に打ち込むため彼女とも別れてしまいます(ここはほとんど同じ)。

「ラ・ラ・ランド」と「セッション」は音楽を題材にしている以外にも、こんな共通点があったんですね。

デイミアン・チャゼルにとって映画監督になることは間違いなく、人生の目標のひとつだったはずです。彼の作品に似通ったメッセージ性が秘められているということは、もしかすると監督自身も夢のために大切なものを失ったのかもしれません。

「ラ・ラ・ランド」という夢

この映画において夢は、「いつかこうなりたい」という未来への願望であり、また「あの時ああしていたら」という過去への願望でもあります。

デイミアン・チャゼル監督は大好きな50年代ミュージカル映画を夢見ながら、「ラ・ラ・ランド」という自分にしか作れない映画を完成させました。今作はデイミアン・チャゼルの夢そのものでもあります。

かつ「ラ・ラ・ランド」は映画を見る僕たちにとっても夢です。エンドロールが終わり劇場が明るくなった時僕らが感じているのは、いい夢を見た日の朝の気分にそっくりです。

 

ラ・ラ・ランド-オリジナル・サウンドトラック(スコア)

ラ・ラ・ランド-オリジナル・サウンドトラック(スコア)

 

 

PS.一番驚いたのは予告でラストシーンを大胆に使っていたこと。