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“ほぼ”デイリーシネマ

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『ヘルタースケルター』と『ネオン・デーモン』で美容整形を考える

※この記事では映画のラストシーンにまで言及するネタバレがあります。

今年一月、ものまねメイクで有名なざわちんさんがtwitterで「鼻を整形したい」という旨のツイートをしたところ、ざわちんさんのtwitterが炎上するという事件が起きました。

AKBやNMBなどのアイドルグループに対する整形疑惑もよく持ち上がっていて、なんだか整形=悪という図式を多くの人が持っているように感じます(悪というのは言い過ぎかもしれませんがいい言葉が見つからないので「悪」としておきます)。

ですが本当に整形は悪なのでしょうか。美容整形した女性の心の闇を描いた2本の映画『ネオン・デーモン』と『ヘルタースケルター』を例にして少し考えてみましょう。

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2作品のあらすじ

『ネオン・デーモン』の概要、あらすじはこちらの記事で書いています。

moyuru6673.hatenablog.com

ヘルタースケルター』のあらすじ

カリスマモデルとして活躍するりりこには、ほぼ全身を整形しているという秘密があった。定期的に訪れる整形の副作用に苦しみながらも貪欲に仕事を続けるりりこだが、ある日同じ事務所から自分より若く天然美人であるこずえがデビューし人気が出始める。御曹司の彼氏にも裏切られ、服用していた薬の中毒症状も激しくなり、りりこの精神は徐々に蝕まれていき……

『ネオン・デーモン』と『ヘルタースケルター』の関係

『ネオン・デーモン』と『ヘルタースケルター』は、「整形美人が生まれたままの顔で活躍する人気モデルを妬んで殺そうとする」という点でシナリオが共通しています。

違うのは『ネオン・デーモン』は主人公ジェシーが天然美人で殺される側なのに対して『ヘルタースケルター』のりりこは殺そうとする側の整形美人であるという点。

2作品は似通ったシナリオながらも視点が真逆になっているのです。

ヘルタースケルター

2作品における整形美人の扱われ方

両作品ともに整形美人は嫉妬からライバルを殺そうとする女として描かれています。その点ではりりこやジジは悪人として演出されていると言っていいでしょう。

ですがだからといって映画に込められたメッセージが「整形する奴は悪い奴だ」というわけではありません。あくまで悪いのはりりこやジジという「個人」であり、両作品共に整形という概念そのものを悪と結びつけてはいないのです。

りりこが精神を病んでこずえを殺そうとしたのは、元をただせば入れ替わりの激しいモデル業界が原因です。『ヘルタースケルター』が批判しようとしたのは整形や、整形をしたりりこではなく、現代社会の消費構造でした。

一方『ネオン・デーモン』で主人公のジェシーを殺したジジはどうでしょうか。確かに彼女は凄まじい美への執着をみせジェシーに嫉妬していましたが、美に執着していたのはジジだけではありません。下着モデルオーディションで出てきたサラだってそうですし、そもそも天然美人であるジェシーだって映画後半では美に取りつかれていました。

ただジェシーの場合、元が美人だったため整形の必要が無かっただけのことです。ジェシージェシーでファッションショー以降、腹の底に黒い感情を持ち始めていました。

天然美人だから純粋、というのも整形=悪というのと同じ偏見です。『ネオン・デーモン』におけるデーモンとうのは「美」そのもの、もしくは美にとりつかれた女性たちだったのではないでしょうか? 悪魔はジジだけではないはずです。

まとめ

繰り返しますがどちらの作品も決して整形自体を批判してはいないのです。

なぜ整形に対して騙されているような感覚や嫌悪感を感じる人がいるのか。明確な答えは出せませんが、女性目線では「私だって整形したいけどお金がない」という妬みなのかもしれませんし、男性目線なら「本当は不細工なのに騙しやがって」という思いかもしれません、もしくはもしかすると遺伝的に不利な物を無意識に嫌悪している可能性もあります。

誰だって自分を良く見せたいはずです。整形はあくまで綺麗な自分になるための手段のひとつのはずです。『ヘルタースケルター』では終盤にプリクラやマスカラが思わせぶりに映されますが、あのシーンは明らかに「整形というのはメイクや写真加工の延長にあるものだ」というメッセージ性を持っていました。

男の僕には美しさに執着する女性の気持ちは完全には理解できません。ですが今回紹介した2作品を続けて鑑賞することで、女性の美に対する想いがどれほどのものか身に沁みました。

ヘルタースケルター』と『ネオン・デーモン』、単体作品としても十分面白い映画ですが合わせて観れば掛け算の面白さが味わえる映画です。片方しか見ていない方はぜひもう一方もご覧ください。