だらだら映画日記『ヘルタースケルター』
数日前に鑑賞した『ネオン・デーモン』が美をテーマとした作品だったため、類似したテーマを扱う沢尻エリカ主演の邦画『ヘルタースケルター』を観ました。
漫画の実写化だから大して期待はしていませんでしたが、これが予想に反して面白い。美容整形を重ね誰もが羨む美貌を手に入れた主人公りりこが、幸福の絶頂から急速に転落していくストーリーは、『スカ―フェイス』のようなピカレスクロマン(悪人小説)を彷彿とさせます。りりこがスナック感覚で精神安定剤をパクつくシーンは、コカインの山に顔を突っ込むアル・パチーノと被りました。
この映画の最大のこだわりに思えるのは、セットやセットに付随する小道具、大道具の造形・デザインです。イメージカラーである紅一色で染まったりりこの部屋は、彼女の精神世界の表象として雄弁にりりこの内面を語っています。
それからわざわざりりこが表紙になっているファッション雑誌を何十種類も作っているのも驚きでした(こずえでも作ってたのはもっと驚いた)。
『ヘルタースケルター』は決して美容整形を「悪」として描いていません(あの整形外科医はどうみても悪だけど)。作中でマスコミや、マスコミの報道を見たJKたちはりりこを虚飾で塗り固められた存在として嫌悪しますが、この映画が真に批判しているのは「流行」という言葉をもって行われる猛スピードの「消費」でしょう。
新しい人気モデルが生まれては飽きられ消えていく連鎖、それを18才のモデルこずえは痛烈に指摘します(いくらなんでも説明的すぎるだろうというくらいに)。そんなこずえの姿は「私が死んでも代わりはいるもの」と言った綾波レイとオーバーラップしなくもない。
『ネオン・デーモン』をきっかけに『ヘルタースケルター』という作品に出合えたのは本当にラッキーなことでした。世間の評判はあまり良くないので、きっかけがなければ一生見ることのなかった映画だったかもしれません。netflixでもプライムビデオでも見られるので良かったら皆さんも見てみてください。
『ヘルタースケルター』を踏まえた上での『ネオン・デーモン』についてのレビュー記事もそのうち書くつもりなので、どうぞ気を長くしてお待ちください。