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近未来社畜映画『ゼロの未来』紹介編

※当記事はネタバレなしの紹介編と、ネタバレありの感想編に分かれています。紹介編のこの記事にはネタバレは含まれていません。

テリー・ギリアム監督作品『ゼロの未来』

ギリアム監督といえば、ドラッギーかつ幻想的な映像を用いて近未来のディストピア社会を描いた傑作SF映画未来世紀ブラジル』を手掛けたことで知られていますが、『ゼロの未来』の設定や物語世界はその『未来世紀ブラジル』と非常に似通っています。

あらすじ

プログラマーの主人公コーエンは、毎日職場に行って働くのに嫌気がさしていた。何者からか自分にかかってくる謎の電話を待ち続けているコーエンは、自宅勤務を希望していたが会社はコーエンの申請を認めていなかった。

ところがある日、コーエンは上司から「ゼロの定理」と呼ばれる数式を解く仕事を任され、そのためならと自宅勤務も認められた。自宅で「ゼロの定理」を解き始めたコーエン、しかし証明はうまく進まず、会社からの進捗報告の催促も激しくなるばかり。とうとう精神が限界に達したコーエンは仕事用のパソコンを叩き壊すのだが……

みどころ1.極彩色のブレードランナー、ポップなディストピア

今作の魅力としてまず挙げるべきは、人と商品広告で溢れる近未来世界のデザインでしょう。『未来世紀ブラジル』でもSF機器やファッションなどのデザインが非常にユニークだったのが印象的でしたが、『ゼロの未来』のアートディレクションはブラジルともまた少し異なっています。

中でも特徴的なのはやはり街の明るさでしょう。『ブレードランナー』や『未来世紀ブラジル』では夜の街を舞台にすることで閉塞感の漂う世界を演出していましたが、『ゼロの未来』の街並みは繁雑としていながらも明るい。そして明るいながらも街には確かな退廃感があります。

歩行者を追いかけてきて喋る街頭広告、数十個もの禁止事項が記されている公園の看板など、映画の脇を固める小道具がどれもポップアートのようでとても惹かれます。

みどころ2.クリストフ・ヴァルツが演じるダメなおっさん

『ジャンゴ 繋がれざる者』や『007スペクター』など、頭脳派のカッコいいオジサマみたいな役柄が多いクリストフ・ヴァルツ。そんな彼が今作で演じるのは、だらしない体でだらしない生活を送っている会社員。

映画が始まってすぐ主人公の全裸を見せられるのですが、裸から漂う「ただのオッサン」臭がとてつもない。あのカッコよかったクリストフ・ヴァルツはどうしちゃったんだろうと言いたくなるくらいのビール腹です。

おまけに主人公コーエンはちょっと(かなり?)電波受信してる系おっさんなので一人称が「我々」。

とにかくクリストフ・ヴァルツでギャップ萌えできる映画です。

みどころ3 テーマは「ブラック企業で働く主人公の生きる意味」

仕事に追われるコーエンは生活の中に喜びを見いだせなくなっていて、自らの生きる意味を求めています。

『ゼロの未来』はSF映画ですが、描いているのは間違いなく現代的なテーマ。働きづめで疲れた社会人の方ならコーエンに共感できること間違いなしです。

みどころ4.あれ!?エンシェント・ワンさんじゃないですか!!

精神科医役で『ドクター・ストレンジ』でストレンジの師匠を演じたティルダ・スウィントンが出てくるのですが、『ドクター・ストレンジ』を見てから見ると笑わずにはいられないシーンがあります(ちなみに僕はそのシーンを見て精神科医役がティルダ・スウィントンなのに気づきました)。

ティルダさん頭の形がいいからスキンヘッドがホントに似合ってます。もしかしてエンシェント・ワンのキャスティングは『ゼロの未来』を見て決めたんですかね……?

 

2時間もない映画ですが情報量が多くて鑑賞後にはおなかいっぱいな気分になる素敵な映画『ゼロの未来』。おすすめなのでぜひご覧ください(『未来世紀ブラジル』も未見なら一緒に見るとより楽しめます)。

 

後日ネタバレありの感想編もアップするのでお楽しみに!